平成の経済史は「失われた20年」に象徴されるという。成長著しかった札幌の経済もまた高度成長→低成長→「失われた20年」と同じ軌跡を辿ったという。問題はその後持ち直したかに見える日本経済だが、講師はこれまでの資本主義の理論では説明できない現象が起こっていると指摘する。
7月9日(月)夜、北大の全学企画公開講座「去る時代、来たる時代を考える」の第3回の公開講座があった。
この回は、「日本史と平成史 ~後世の史家は何を思うか」と題して、北大大学院文学研究科の白木沢旭児教授が講師を務めた。
※ ウェブ上から拝借した白木教授の顔写真です。
講師を務めた白木沢教授は経済の専門家ではない。氏の肩書が示すように文学研究科ということだから、歴史の研究が専門である。その氏がなぜ経済を論ずることになったかというと、札幌市の「新札幌市史」の戦後経済史の編纂を依頼されたことが契機だったそうだ。
講義の前半は、白木氏が携わった「新札幌市史」に関する戦後の札幌経済の推移を、各種統計資料を提示しながら説明された。それによると、札幌市は不動産業者の多さが目立つそうである。2009年現在の統計でも札幌市より人口の多い名古屋市と比べはるかに上回っているという。これは北海道開発事業費が他県と比較して多額なことと関係しているということだ。
戦後の札幌は、他に例を見ない勢いで急発展・急膨張を遂げてきたが、やはり平成に入り各種統計共にマイナス成長を示すようになった。その中で、第三次産業だけは他都市同様平成に入ってからも一時を除き、伸長を続けているという統計が示された。
私が興味を抱いたのは、講義後半になってからである。
それは札幌経済の推移から、話が日本経済の景気回復に関する話となってからである。
白木氏から提示された資料によると、2013(平成25)年からの日本経済は回復基調に転じている。輸出額は大幅な伸びを示し、設備投資も上向き基調である。ところが個人消費は伸び悩んだまま、という資料だった。(日本経済新聞〈以下「日経」と表記〉より)
日経の資料はさらに続く。2008(平成20)年を境に、世界のGDPも、株式の時価総額も大きく伸びているのに対して、賃金は伸び悩んでいるというのだ。このことは成長の果実が資本家に流れ込んでいると日経は見ていると白木氏は指摘する。
さらに日経の資料は続く。
2000年代以降、国内において通貨供給量は拡大の一途を辿っているのに対して、金利はゼロに近い水準である。
白木氏が言うには、資本主義においては景気が上向いてくると金利も上昇してくるのが通例だったそうだ。それが今の日本では(日本ばかりではないようだが)超低金利時代を迎えている。
このことはこれまでの資本主義発展の理論では説明できないことだという。
このことを指して白木氏は「あるいは資本主義の終焉を迎えているのではないか」と話されたのだった。
※ 白木氏が示した資料とは違いますが、世界の金利を示す資料を見つけたので、参考に載せることにしました。
経済の難しいことは私には分からない。ただ、メディアや識者が言うところによると、「貧富の差が顕著になった」という論調が多いことに私自身「この先、どうなっていくのだろう」という一抹の不安がある。
果たして「一億総中流化」を謳ったあの時代はもう帰ってこないのか…。