財政破綻から10年、懸命な再建を図る夕張市だが未だその後遺症に悩まされている。しかし、若き鈴木市長を先頭に逞しく前を見て進んでいるようだ。「RESTART Challenge More.」を合言葉に。市役所職員からお話を聞いた。
※ 夕張市役所の正面玄関です。立派な外観に見えました。
7月11日(水)、いしかり市民カレッジの「大人の遠足」で最初に訪れたのは夕張市役所だった。
財政破綻直前の平成18年度には市職員が263名勤務していたという庁舎は5階建ての立派な建物だったが、現在の職員数は100名だという。庁舎内を巡らせてもらったが、建物が大きいだけに寂しい感じは隠せなかった。
※ 市役所内は昼休みだったせいでしょうか?閑散とした感じが目立ちました。3階かな?
私たちは4階の会議室に案内され、企画課の左近航氏(入庁8年目という若手の職員)から、財政破綻の背景、そこからの再建を目指す今の姿についてお話を聞いた。
まず人口であるが、今年5月末現在で8,267人だそうだが、破綻前の平成17年には13,000余人だったという。
左近氏は夕張市のおかれた現状をてらいもなく披瀝してくれた。それによると、平成27年度の国勢調査によると、夕張市は全国の市の中で、次の項目がワースト1だったそうだ。
◇人口減少率 ➪ 年-4.1%
◇15歳未満人口率(少子率) ➪ 5.7%
◇15歳~64歳(生産人口率) ➪ 45.8%
◇65歳以上人口率(高齢化率) ➪ 48.5%
さまざまなデータは夕張市のおかれた厳しい現実を示している。しかし、左近氏は「夕張市の現実は、世界で誰もが経験したことがなく、今後日本中が直面するであろう課題にいま向き合っている」と語った。
※ 夕張市役所企画課の左近航氏からお話を伺いました。
左近氏は夕張市が陥った財政破綻の原因について触れた。その要因は◇閉山処理費(580億円)、◇観光施設の建設(170億円)、◇観光施設の管理運営費(年40億円)などだそうだ。
外からは観光施設への異常投資が破綻の原因と聞いていたが、確かに観光施設の建設も要因の一つではあるが、炭鉱の閉山処理費が非常に大きな要因だということを教えてもらった。門外漢には炭鉱閉山の処理費用が地元自治体の負担になるとは、理不尽な気もするが、そうなっているんですね。
財政破綻後、夕張市は財政の再建に奔走し、全国最低水準の市民サービスに徹し、生命に関係のない事業を削減することによって返済を実現してきたそうだ。
夕張市の解消すべき債務額は353億円で、これまで10年間で116億円の返済を終えているという。残り237億円を平成38年までの10年間で返済する計画だという。
左近氏は言う。財政破綻で失ったものは、お金だけではない、市民生活だけでもない。最も痛手を受けたのは「地域の誇りが失われたことだ」と…。
財政破綻から10年を経て、夕張市では平成28年度に「地域の誇り」を取り戻すために、
総合戦略を策定したそうだ。そのキャッチフレーズが「RESTART Challenge More. ~夢を主語に、挑戦するまちへ~」と制定し、新たなスタートを切ったという。
これからの10年間は「財政再建」と「地域再生」が夕張市の大きな課題だという。財政再建についてはこれまでの再建策の継続であるが、地域再生については「人の距離を近づける施策が必要」だという。そのために、コンパクトシティ構想を実現することだという。
それは炭鉱全盛時代に夕張に脈々と息づいていた「一山一家」の現代版をまちづくり根幹に据え、地域の人々のゆるやかな結びつきで、互いを尊重し思いやれるまちを目指すことだそうだ。
そして今夕張市が取り組んでいるコンパクトシティ構想の施策が次々と紹介された。
夕張市の人口は、自然減に加えて社会減も他都市を上回る勢いだから、おそらく人口減は続くだろう。しかし、若い鈴木市長を始め、市職員も説明役を買って出た左近氏がもはやベテランに数えられるほど若い職員が多数を占めているという。
若さが、熱が、きっと夕張市に新たな息吹を吹き込んでくれるに違いない。もちろん住民たちも手を携えて…。
夕張市のRestart、そしてChallengeを見守っていきたい。