最近、病院で処方される薬の量が多いと感ずることはありませんか?と講師からの問いである。高齢化に伴い薬の処方量が増えているという。中には必要のない薬も含まれているようなのだ。ポリファーマシーについて考えた。
10月13日(土)午後、かでる2・7において西円山病院が主催する「地域で暮らす高齢者のための医療公開講座」の10月講座を受講した。
今回は「お薬が多いと感じていませんか?」と題して、同病院の二人の薬剤師の方が講師を務めた。
最初は富田昌志薬剤師が「病院の薬剤師さんって何してるの?」と題して話された。
病院の薬剤師は①調剤、②服薬指導、③医薬品情報の収集・研修、④チーム医療への参画、といったことを職務とされているとのことだった。
私たちが知る薬剤師は主として街中にある「調剤薬局」に努めている方という印象が強いが、それは通常病院に通院されている患者さんを対象としている薬剤師で、病院勤務の薬剤師は主として入院患者のための薬剤師という役割を担っているとのことである。
続いて、阿部孝行薬剤師が「ポリファーマシー 薬が多すぎると、良くない?」と題して話された。
「ポリファーマシー」とは、「たくさんの医薬品」と訳され、日本では「多剤療法」とも称され、その弊害が論じられるようになったそうだということだ。
それは、高齢化によって、病気が増えるに従い薬の量も増えてくる。ところが高齢化によって内臓が弱ってきているのに薬の量が増えることは薬の影響が強くなることによる弊害が考えられ、その現象を「ポリファーマシー」という言葉で表現されるようになったという。
続いて講師はポリファーマシーの現状と、ポリファーマシーを理解するキーワードを次々と紹介した。そのキーワードとは「処方カスケード」、「漫然投与」、「薬物相互作用」、「PTPシート」、「一包化」、「コンプライアンスとアドヒアランス」等々の言葉である。
阿部氏が関与した患者で6種類の薬を毎食後投与されている患者が「薬が多くてお腹いっぱいになっちゃう」という患者がいたそうだが、調べてみると初めに投与した薬が効かなかったために、次々と新しい薬を追加して投与されたが、以前からの薬も継続していたという。しかし、以前に投与していた薬は必要ないのではと考え、投与を中止しても影響はなかったという。これは「漫然投与」の例の一つだという。
続いての例は、肝硬変で入院していた患者が咳と微熱の症状が出たため、その対策の薬を処方したところ高血圧の症状が出てきたので、次には血圧降下の薬を処方したという。それでも血圧は降下しなかったそうだ。原因は解熱剤が高血圧の原因だったという。
この例のように、ある薬の副作用に対して新たな薬が処方されること、さらにそれが連鎖することを「処方カスケード」と称するという。
現在の薬は、「PTPシート」で供されている。PTPとは「 錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート状のもの」を指す。阿部氏が接した患者は実に15種類の薬が処方されていたらしいが、あまりに多いために医師の指示通りに服用していない事実が明らかになったという。そこで同じ時間に服用する薬を一つの包にまとめて服用するようにすることが「一包化」ということだそうだ。
※ 良く目にする薬はこうして梱包されPTPシートと呼ばれるそうです。
続いて、「コンプライアンスとアドヒアランス」について種々説明されたが、結論的には次のようにまとめられるようだ。
「コンプライアンス」とは「遵守」と直訳されるが、医療においては「医療者の指示通りに処方された薬を服用すること」を差す。
これに対して「アドヒアランス」は「執着」と訳されるが、医療においては「患者が積極的に薬剤の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること」とされ、そのことが薬の量を減らすための方策の一つであるとまとめられた。
私もいずれかは、複数の病気に罹ったり、入院したりというケースがあるかもしれない。その際には、ただ医師の指示に従うだけではなく、自分が罹患した病気を理解し、処方される薬にも関心を持たねばならないことを教えられた今回の講座だった。