ブロンズ彫刻家として精力的に活動を続ける椎名澄子氏からお話を聴く機会を得た。ブロンズ彫刻の制作は私が想像していた以上に複雑な工程を繰り返した上に完成するものであることを教えられた。
10月18日(木)午前、道立近代美術館のプレミアム講座の2回目の講義があった。この回は旭川短期大学で教鞭をとる椎名澄子教授が「彫刻作品のできるまで」と題してお話された。
椎名氏は東京芸大の彫刻科を卒業後、同大学院において彫刻専攻を終了された後、少し時間をおいて現在の旭川短期大学に職を得て、学生を指導するとともに、彫刻家として活動されているということだ。
椎名氏は最初に「ブロンズ彫刻の魅力」について話されたのだが、彼女は「幸せ、やさしさ、柔らかさ、…」といったものを硬質の素材(ブロンズ)で表現するのが魅力だと語った。
さらに、彫刻作品一般についての魅力になかで「彫刻作品は不確かなもの」であることが魅力の一つである、と語っていたのも印象的だった。
※ 椎名氏の代表作(?)の一つ「風の子」三部作をウェブ上から拝借して掲載します。
ブロンズ彫刻を含む彫刻作品の制作過程は次のような段階を経て完成するという。
① 着想
② 〇想(〇は不明)
③ 構想
④ 制作(作成 ⇔ 壊すの繰り返し)
⑤ 発表
その中でも、制作の過程がブロンズ彫刻の場合は非常に複雑である。この工程について椎名氏は動画を用いながら詳しく説明されたのであるが、私の文章力ではとても再現できない。
私が理解できたのは、粘土で原型を作成したのち、その原型を二つに割って外面、内面の両面に石膏を塗り付けて型を取るということ。さらには、その型を組み合わせてブロンズを流し込む型を作成すること、等々…。私の理解の範疇を超えた複雑な工程が求められるようである。(私の表現はかなりあいまいなので、正確に知りたい向きはネットなどを参照してほしい)
ともかく大変な工程を辿った末に、あのブロンズ像が完成していることをぼんやりながら理解できたことは受講した一つの成果だったと受け止めたい。
※ 幼子が遊んでいるほのぼのとした情景を硬質のブロンズで表現しているところに作品の魅力の一つがあるようだ。
さて、椎名氏は彫刻家として独り立ちすることの難しさについても触れた。
その難しさについて、椎名氏自身のこれまでを振り返りながら紹介してくれた。それによると、
① 高校 美術科 or 美術部(椎名氏は高校の美術部)
② 美術予備校(椎名氏は予備校時代にテラコッタからブロンズに志向を変えたこともあり3年間の予備校生活)
③ 大学(東京芸大 4年間)
④ 大学院(東京芸大大学院 2年間)
⑤ 地元(札幌)に帰り創作活動(アルバイト生活)
⑥ 博士課程(取得)
⑦ 大学等に所属しながら創作活動(旭川短期大学)
⑧ 各種賞の獲得レース
このように見ていくと、椎名氏が自活できるようになったのは大学に職を得てからではないだろうか?
最後に、椎名氏は彫刻家・美術科の先達、佐藤忠良・安野光男の「子ども美術」という詩を提示し、美術教育の神髄に触れて講座を終えた。
芸術家のお話は凡人の私のような者にとっては理解するのがなかなか難しい。しかし、これからも臆せずプレミアム講座を受講したい。