ブットマンのテナーサックスが時には囁くように、時には咆るように奏でる中、若手ミュージシャンのピアノ、ギター、ベースが繊細なリズムを刻む…。イーゴリ・ブットマン クインテットは極上の時間を提供してくれた。
10月27日(土)夜、札幌市生涯学習センター「ちえりあ」において、「日露文化芸術フェスティバル in 北海道」の一環としてイーゴリ・ブットマン クインテット ジャズコンサートを聴く機会に恵まれた。
ロシアジャズの巨匠とか、モスクワ・ジャズオーケストラのリーダーというキャッチフレーズはけっしてオーバーな表現ではなかった。
イーゴリ・ブットマンのテナーサックスからは極上の音が紡ぎ出された。あまり予備知識もなく参加したジャズコンサートだったが、ブットマンの音は会場の聴衆の心を鷲掴みにするほど素晴らしく、熱のこもった演奏だった。
そしてバックのプレイヤーも素晴らしかった。ピアノのオレグ・アックラフト、ドラムのエドゥアルド・ジザク、ベースのセルゲイ・コルチャギン、ギターのエフゲニー・ポポジー、とブットマンを慕って集ったメンバーもそれぞれロシアを代表するプレイヤーらしいのだ。
特に私は、ピアノのアックラフトとギターのポポジーの若手二人が素晴らしいと思った。
彼らが演奏してくれた曲を羅列してみよう。
◇ Falling Grace
◇ Prophecy
◇ Menina Moca
◇ Nostalgia
◇ Water Skis
◇ Baby I Love You
◇ Nature Boy
◇ Caravan
などの曲だった。(一部キルリ文字表記の曲は表現できず)
途中からピアノのオレグ・アックラフトが突然のようにボーカルを務めたのには驚いた。そのアックラフトの歌声がまた素晴らしいのである。プログラムやMCでの説明はなかったがアックラフトはその様子からうかがうところ目が不自由のようだった。そのことが彼のピアノの演奏、ボーカルの歌声のピュアなところに反映されているように思えた。
約90分間のステージを終え、会場を後にするとき聴衆の方の一人が「もっと大きなホールでやっても良かったのでは…」と話をされていたのが耳に入った。私もまったく同感だった。