近くて遠い道立近代美術館にようやく足を運んだ。「京都国立近代美術館名品展『極と巧 京のかがやき』」である。「猫に小判」の感は拭えなかったが、一生懸命に名品の価値を感じようと観て歩いた…。
9月29日(土)から開催されている(本来は9月15日からの予定だったが、9月6日の胆振東部地震の影響から時期が延期された)表記名品展が開催されていたが、なかなか足が向かなかった。それでも今日は平日で雨模様だったこともあり、観覧者も少ないだろうと意を決して足を運んだ。
目論見どおり観覧者はそれほど多くなく、いつもの特別展よりはゆっくりと観て回れた。
名品展は大きく「日本画」と「工芸」の二部構成となっていた。日本画はさらに「黎明」「多様な展開」「美人画」「南画」「戦後」と章分けされ、30作品が展示されていた。工芸の方も「そっくり」、「金工」「陶芸」「漆芸・木工」「染織」と分かれ、計95作品の展示があった。
※ 並河靖之作「藤図花瓶」です。本作品展の目玉の一つのようです。
画は正直に言ってほとんど分からないが、日本画は観ていると落ち着いた感じを与えてくれるところが良い。特に黎明期の作品は好ましく感じた。同じ日本画でも戦後のものは西洋のキュービズムの影響を受けたとかいう作品は美術に疎い私から観たらなんとも受け入れがたいところがある。(あくまで私の印象であることを断っておく)
※ 岸竹堂作「月鴉図」です。 ※ 美人画の一つ、上村松園作「花のにぎわい」です。
対する工芸であるが、こちらはその分野が多岐にわたるが、最初の「そっくり」という章が興味深かった。日本人の繊細さ、器用さが存分に発揮された作品が並べられていた。なかでも高瀬好山が製作した「鯉自在置物」は作品自体が自在に折れ曲がるという仕組みが外国人から珍重されたという。
※ 高瀬好山作、鉄製の「鯉自在置物」です。 ※ その自在置物は写真のように尾が自在に折れ曲がります。
また先日講演を聴いた十五代樂吉左衛門の楽茶碗は、私の欲目もあってだろうと思うが他の陶芸作品とは違い、その渋さが異彩を放っているように見えた。
※ 十五代樂吉左衛門の楽茶碗です。(作品名は不明です)
「工芸」の一般的な認識は“職人芸”とも称される世界である。だから先日の十五代樂吉左衛門氏の講演でも「楽焼は芸術か?」などと自問する場合もあるのだろう。しかし、職人芸も究めれば立派な芸術作品であることを今回の作品展は証したことになると思われた。
「極と巧」…言い得て妙なタイトルである。
※ 一枚目の写真以外はウェブ上から拝借しました。