「荒城の月」、「花」などをはじめとして数々の名曲を作曲した滝廉太郎は23歳という若さで短い生涯を閉じた。その滝廉太郎の没後90年を記念して1993年に制作されたこの映画は、恋と友情に生き、音楽活動に燃えた短い生涯を描いた傑作である。
10月25日(水)午後、道民カレッジが「懐かしのフィルム上映会」と銘打って、道民カレッジの視聴覚室に所蔵するフィルムを順次上映するという企画が始まった。
その第1回目の上映フィルムに選定されたのが「わが愛の譜 滝廉太郎物語」だった。
※ 留学先のドイツで互いに励まし合う廉太郎とユキの二人
映画は、廉太郎が明治28年に故郷大分から音楽家をめざして東京音楽学校に進学した時から始まる。そこで彼はピアニストを目指す中野ユキと巡り合う。
東京音楽学校での中野ゆきとの淡い恋、そして先輩の鈴木毅一との友情を深める中、廉太郎は懸命にピアニストの道を邁進する。しかし、生来の身体の弱さが廉太郎を苦しめる。そんな中、廉太郎は作曲にも取り組み、「花」や組歌「四季」などを作曲して才能を開花させていく。
明治34年、廉太郎は国の留学生としてドイツ・ライプツィッヒ音楽院に入学する。先に留学していた中野ユキと再会を果たすが二人とも音楽の先進地でのレベルの高さに自信を失いかけていた。そんな中で二人は励まし合うことで互いに魅かれていく。しかし、そんそうした中で廉太郎は病魔に襲われ、志半ばで帰国を余儀なくされる…。
そのことで二人は再び逢えることはなく、廉太郎は23歳という若さで短い生涯を閉じてしまうのだが、二人の間には廉太郎がユキに心を寄せた証が遺されたのだった。
※ 滝廉太郎ご本人の顔写真である。(ハンサムな容貌である)
廉太郎の生涯を描く映画としても、音楽映画としても、高いレベルで結晶した映画だと感じた。主演を演じた風間トオル(廉太郎役)も鷲尾いさ子(ユキ役)も好演していた。風間トオルはハンサムすぎるかな?と思われたが、滝廉太郎子ご自身がなかなかのハンサムなので風間ははまり役だったようだ。
※ 滝廉太郎役を演じた風間トオルであるが、グッドキャスティグだったのでは?
風間にも、鷲尾にも共通することだが、ピアノの演奏のシーンで、その運指が本格的だったことが印象的である。このような映画の場合手元だけを映して、本人の演奏シーンは背後だとか、遠景の場合が多いのだが、この映画においては手元の演奏シーンから徐々にズームアウトして本人が実際に演奏しているように映っている。たとえ、音そのものは違っていたとしても、その運指はまったくピアニストそのものに映ったのは、相当に訓練した賜物であろう。
音楽映画として、伝記的映画として上々の仕上がりではと思われた映画だった。