この10日ほどの間に日をおきながら3日間地下鉄24条駅界隈を彷徨った。長距離ウォークのトレーニングを兼ねながら、いまだ未知の街を探訪し、興味ある物件を見つけてレポしようという試みだった。3日間合計で50キロ強歩いた。しかし、思惑は外れたようだ。以前歩いた円山地区や八軒地区のような興味ある物件にはなかなか出会わなかった。「へえ~!?」というような物件は皆無で、「あ~、あるある」的なものがほとんどだった。これから何回かに分けて、その「あるある」的物件についてレポすることにする。
いゃ~、壁全体を宣伝媒体としているのはススキノ交差点のところくらいかと思っていたが、なんとなんと!北24条駅界隈にも似たような物件が数多くあったのだ!
地下鉄北24条駅で降り、地上に出たときいきなり大きな看板が目に飛び込んでくる。4階建てくらいの建物の壁いっぱいに居酒屋やレンタルDVDなどの店の看板が派手に描かれているのだ。他は?と見ると、それほど派手な看板は見当たらなかった。私は「あゝ、そこまで派手な宣伝をするところはそれほどないんだ」と思っていた。
ところが後日!北24条駅からほど近い西5丁目・樽川通(旧電車通り)を歩いていた時だった。またまた壁いっぱいに店名や業種を描いた建物が次々と現れた。まるで広告合戦をしているかのように…。これには度肝を抜かれた。壁いっぱいの広告というとすすきの交差点のところが有名だが、それもその一帯だけである。むしろ北24条界隈の方がそうした看板は多いのではないだろうか?
壁も建物も派手なことでは、某賃貸物件紹介業の派手な建物が有名だ。しかし、私にはどこか街から浮き上がっているようにも見えた。ところが北24条界隈の壁いっぱいの広告を目にしたときは、「これから日本の繁華街はますますこのような傾向になっていくのだろうか?」と少し憂鬱にもなってきた。
私には街の景観に対する原体験がある。それはもう50年も前の話になるが、私は学生時代にヨーロッパ・中近東・アジアを彷徨って歩いた体験がある。その際、私はソ連から北欧、そして中欧へと順に巡って歩いた。その際にフィンランドやスウェーデン、ノルウェーなどの街を見たとき、繁華街においてビルなどに広告の類を一切目にしなかった。街全体が落ち着いた色合いで、カラフルな色はビルのウィンドーの中だけで、人々はそれらを眺めながら散策するウィンドーショッピングを楽しみにしているようだった。ドイツ、イギリスでも同様だった。少し変化が見えてきたかな?と思われたのはフランス、イタリアに入ってからだった。それとても日本のような派手な広告を目にすることはなかった。この時の体験が私の中では色濃く残っているのだ。
なぜこれほどヨーロッパの街と日本の街では違うのだろうと思ったのだが、それはきっとアメリカの影響なのではと思われる。つまり、戦後において日本はあらゆる面においてアメリカナイズされる中で、街の景観もアメリカに似てきたのかな?と思われる。そしてそうした光景に私たち日本人は不感症になってしまっているのかな?と思ったりしている。
日本は外国人から「街がきれいだ」と言われることが多いと聞く。はたして日本の看板などの広告媒体についてはどう思っているのだろうか?
※ 有名なすすきの交差点のところの壁の広告です。
広告を出している業者に責任はない。法の範囲内で行っていることだろうから…。問題は街の景観をどう創っていくか、という立場の人たちがもっと議論を重ねてほしいと思うのだ。なにもかにも欧米を見習えなどと野暮なことを言うつもりはない。ただ、あの落ち着いた街の雰囲気というのは見習ってもいいような気がするのだが…。「ぶらり散歩」が思わぬところへ飛び火してしまった。