田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 238 あん & ドリアン助川講演

2019-06-09 19:52:02 | 映画観賞・感想

 ハンセン病患者がおかれていた厳しい現実を映す映画であるが、名優樹木希林が主演した映画という意味でも記念碑的映画である。映画上映の後、原作者のドリアン助川氏が著書「あん」誕生の背景を語った。

                

 今日(6月9日)午前、札幌プラザ2・5において『あん』の上映と、原作者であるドリアン助川氏の講演があると知って駆け付けた。

 映画『あん』の内容については、ウイキペディアの掲載内容を拝借する。 

「季節は春。桜の咲き乱れる公園に面したどら焼き屋、『どら春』で、辛い過去を背負う千太郎(永瀬正敏)は雇われ店長を続け、日々どら焼きを焼いていた。ある日この店を徳江(樹木希林)という手の不自由な老婆が訪れ、バイトに雇ってくれと千太郎に懇願する。彼女をいい加減にあしらい帰らせた千太郎だったが、手渡された手作りのあんを舐めた彼はその味の佳さに驚く。徳江は50年あんを愛情をこめて煮込み続けた女だったのだ。店の常連である中学生ワカナ(内田伽羅 樹木希林の孫娘)の薦めもあり、千太郎は徳江を雇うことにした。徳江のあんを使ったどら焼きのうまさは評判になり、やがて大勢の客が店に詰めかけるようになる。だが、店のオーナー(浅田美代子)は徳江がかつてハンセン病であったとの噂を聞きつけ、千太郎に解雇しろと詰め寄る。そしてその噂が広まったためか客足はピタリと途絶え、それを察した徳江は店を辞めた。素材を愛した尊敬すべき料理人である徳江を追い込んだ自分に憤り、酒に溺れる千太郎。ワカナは彼を誘い、ハンセン病感染者を隔離する施設に向かう。そこにいた徳江は、淡々と自分も自由に生きたかった、との思いを語るのだった。」

           

          ※ 出演者を囲んで左端がドリアン助川氏、右端が監督・脚本の河瀬直美氏です。 

 上記内容でもお分かりのように、我が国がハンセン病患者に対して行ってきた隔離対策によって自由を奪われて人生を過ごしてきた主人公(徳江)を通して、人として生まれてきたことの意味を問う映画である。原作(ドリアン助川)の良さ、監督・脚本の河瀬直美のプロデュース力、徳江役の樹木希林、雇われ店長役の永瀬正敏の好演が相まって非常に上質な作品に仕上がり、考えさせられる映画だった。

            

            ※ 札幌プラザ2・5のステージ上で講演するドリアン助川氏です。

 映画上映の後、原作者のドリアン助川氏がステージに登場し、作品誕生の内側を語った。それによると、彼自身が非常に波乱に富んだ人生を送ってきたようだが、そうした中で絶えず“生きることの意味”を問い続けていたという。ある時、ラジオ番組で若者の人生相談をしていた際に、「社会のために役立たねば生きている意味がない」的な若者の声を聞いたことが、ハンセン病に目を向けるキッカケになったという。

 ドリアン氏は普遍的な意味で「この世に生まれてきた意味」を考え続けたという。そして次の言葉が生まれたそうだ。「私たちはこの世を見るために、聞くために生まれてきた。だとすれば、何かになれなくても、私たちには、生きる意味がある」と…。

 ハンセン病ばかりでなく、残念ながら我が国には過去、現在を問わず数々の“差別”の問題が存在している。私たちは社会的弱者と言われる人たちに対してもっともっとセンシティブ(敏感)にならなければならない、ということをこの映画は訴えていると受け止め、私自身もそうありたいと自省させられた映画だった。