三つの美しい島(南太平洋のツバル、イタリアのベネチア、アラスカのシシマレフ島)は今、気候変動の影響を受け危機に瀕している。それらの島の現状を淡々と映し出すドキュメンタリーは、観る者を画面に引きずり込む魅力に満ちていた。
※ 映画タイトルの前にナンバーリングを付けた。この数字は私が2007年に札幌に転居後に観た映画の通算の映画の数である。「映画は最高のエンターテイメント」と考える私にとって、これからも有料・無料にかかわらずできるだけ映画を観ていこうと思っている。
少しレポが遅れてしまった。9月27日(金)午後、札幌エルプラザで「エルプラ・シネマ」が開催された。今回取り上げられたフイルムは、海南友子監督が2009年に製作・公開した「ビューティフルアイランズ」である。エグゼクティブディレクターとしてあの是枝裕和氏が加わっている。
映画は三つの島の現状をある意味淡々と描いている。そこにはBGM(音楽)も、ナレーションもない。それは監督の海南氏が島のありのままの姿を観てもらいたいためだという。
南太平洋の島国ツバルは気候変動の影響を受けて、世界でも最も早く水没してしまうのではないか、と言われている島国である。島はサンゴ礁から成っており、標高は最大でも5m以下、平均2m前後の低い土地からできている。島では古くから伝統的な生活が続けられてきたが、今や大潮の日などは島中が水浸しとなり、高床式の住居でかろうじて水から逃れている現状である。
イタリアのベネチアはご存知のように「水の都」として有名な観光地の一つである。ところがこのベネチアも近年は水没の危機に瀕している。ベネチアで有名なサンマルコ広場が海水に浸され、ホテルの一階部分は長靴がないと歩けない様子は観ていて異常である。
さらにアラスカのシシマレフ島は、アザラシやカリブー(トナカイ)を獲って暮らす狩猟生活が中心だったが、気候変動により氷が十分に張らなくなったために集落全員が移住を余儀なくされているという現状が映し出された。
映画の中では気候変動に直接言及するわけではなく、島で生活する人々が、環境が徐々に変化していることへの不安の声を伝えるだけである。しかし、観ている私たちはその原因の大半が気候変動によるものだと知っている。
映画は三つの島を一巡りして、再び南太平洋のツバルを美しい光景を映し出す。
監督は言う。「私は今回、この作品で“失われていくもの”を描きたいと思いました。足元の氷河が消えてしまったように、気候変動の影響を受ける島では、長年築いてきた生活文化伝統など、さまざまなものが消えゆく運命をたどろうとしています。(中略)それを、“情報”ではなく、“心”で受け止めてほしいのです。私たちの何が失われようとしているのか、を」
監督のメッセージをどう受け止め、どう自らの生活の中で具体化していくのか、映画を観た者全てが問われていると思った。