好き嫌いは当然あると思うが、映画俳優の大泉洋は本当に才能ある演技者だと私は思う。シリアスな役から、コミカルな役まで…、実に幅広く演ずる姿に共感する。その中でも本作はある意味大泉の良さが生かされた一作だと思った。
エルプラザ(札幌市男女共同参画センター)が主催する「エルプラシネマ」の10月上映会が21日(月)午後、エルプラザホールであったので参加した。今月の上映作は2012年制作・公開の「グッモーエビアン」という作品だった。
映画は以前パンクバンドのギタリストだったシングルマザーの母アキ(麻生久美子)としかり者の娘ハツキ(三吉彩花)、海外の旅から戻ってきたお調子者の男ヤグ(大泉洋)が織りなすちょっと風変わりな一家を描いたものである。なお「グッモーエビアン」とは、ヤグが海外からアキに送られてきた絵葉書に書かれていた一言なのだが、ネイティブアメリカンが発する「good morning everyone(グッモーニング エブリワン)」のことだそうだ。
男女共同企画センターがこの映画を取り上げた理由は、家族の形にとらわれず、その家族が持つ幸せは、その家族のメンバー各々が感ずればいいことなのでは?という問いかけを観覧者に感じてほしいというメッセージを込めていたのだと解釈した。
この映画において、アキとヤグは夫婦ではない、ヤグは海外を放浪した末に母娘が住むところに転がり込んできて、仕事もせずに彼女らに頼って生活をするというなんともいい加減な男である。そんなヤグを面白がる母アキと軽蔑の目で見る娘サツキが織りなすさまざまなエピソードの中で、ヤグの優しさがサツキの頑なな心を溶かし、三人の生活はこれからも続いていくであろう、という余韻を残してジ・エンドとなる。
この映画において大泉洋は前述のとおりお調子者のパンクバンドのボーカリスト役を演ずる。調べてみると彼が39歳の時のものであるが、30歳前後のお調子者役をまったく違和感なく演じている。というより彼本来のコミカルな持ち味が十分に生かされたはまり役だと思えた。
さて映画の主題であるが、現代において家族の形はさまざまあるのだろうと思われる。本作のような形も今や日本の中でも珍しくないのかもしれない。前述したように人の幸せというのはその家族のメンバー各々が感ずればよいことで、他人がとやかく言うものではないという主張はよくわかる。世の中はさまざまな分野において多様性を認めようとする方向に動いている。そのことを認めねばならないと思う。ただ、私自身はやはり昭和の男である。本音ではやはり旧来のような家族の形が自然かな、という思いも拭い去れないのである…。