吉田拓郎のアルバムの中で、最も名盤だと思うのは、コレだ。前回紹介したアナログレコード「TAKURO TOUR 1979」に「TAKURO TOUR 1979 Vol.2落陽」をプラスし、3枚組みのCDとして’90年に発売された。
その楽曲たちは、まさに’79年以前の拓郎の、まさにベストといっていいモノだ。今売られている吉田拓郎のベスト盤を聴いて、拓郎を語ってはいけない。このアルバムこそが、まさに「ザ・吉田拓郎」なのだ。成績主義社会へのアンチテーゼ「知識」。「大いなる」で自分の足元を見つめ、そしてせつない片想い「流星」。さらに、企業戦士の同棲ラブソング「もうすぐ帰るよ」。ああ、もう枚挙にいとまがない・・・
だが、大変残念なことに、このCDは、今、正規ルートでは入手不可能だ。知っている方なら知っているとは思うが、例の「ペニーレインでバーボン」の差別語問題で、この名盤は廃盤となっているからだ。
現代の若者がこのアルバムに触れる機会が、奪われていることが、実に口惜しい。この間のつま恋ライブでは、拓郎は「×××桟敷」を「蚊帳の外」と歌詞を変えて歌ったそうだ。この「ペニーレインでバーボン」という曲の内容自体は、×××の人を差別した内容ではなく、単に慣用句を使っただけと思える。×××という言葉に不快感を持つ方も、確かにいるだろう。だからといってこのアルバムを丸ごと廃盤にすることは無いじゃないか!
最近、「オバケのQ太郎」を筆頭として、こういう過剰な自主規制が、やけに多くなったような気がする。手塚治虫のブラック・ジャックの文庫本のあとがきを見たことはあるだろうか。そこには「この本には世界中の様々な方が誇張されて描かれており、それが人種差別につながると指摘されている。しかし、物語の根底には人間愛や生命の尊さが描かれている。ここでこの作品を改訂するのは、この問題について考えるのに適切な処置ではない。我々は日本の文化遺産ともいえるこの作品を守るために、あえてこのまま刊行し続ける。」とある。非常に見識ある姿勢だと思う。「ちびくろ・さんぼ」も復刊した今、このCDの再発売を、私は強く望む。
「青山徹だぁ!」「松任谷だ、松任谷だぁ!」