あの吉田拓郎氏もベタ褒めの、「ジャパンタクシー」。
普段タクシーにはほとんど乗らない私にも、興味深々のクルマであった。
そしてそれは営業車ゆえ、そのいわゆる【試乗車】は、北海道というか、札幌にも存在しないだろうと、私は思い込んでいた。
しかしながら、尾車氏のリサーチの結果、それが札幌にあることが判明。
その日我々取材班は、心ときめかせ、そのディーラーさんへと向かった。
そして、数十秒に渡る熱い交渉の結果、それに試乗≒運転させていただくという、私の夢が叶ったのである。
試乗車は、上級グレードの「匠」(北海道地区メーカー希望小売価格3,518,640円)だった。
まずは、トランクルームの広さをチェック。
実用上、お客さん持参のスーツケースくらいは、楽に飲み込めそうなスペースである。
タクシーなので、燃料は、当然ながらLPG。
トヨタお得意のハイブリッドシステムとの融合により、カタログ上のJC08モード燃費は19.4Km/Lとなっている。
お客様昇降時にリアスライドドアが開いているときは、バックウインドウの「昇降中」の表示と、左リアドア下部のブルーのイルミネーションが、後続車に注意を促す。
開いたリアスライドドアから、後席スペースをチェック。
FFゆえに、後席の床は、まったく凹凸のないフラットフロア!
5ナンバーサイズながら、後席3人掛けも、余裕でこなせそうである。
メーターパネルは、ステアリングの上から俯瞰するタイプである。
ハザードがステアリングスイッチに組み込まれているのは、私の知る限り、この「ジャパンタクシー」以外には、見当たらない。
インフォメーションパネルによると、我々取材班乗車時点での平均燃費は、1.9Km/Lと芳しくない数字。
おそらくこの試乗車は、ほとんど使われることなく、ディーラーさんの車庫に眠っていたのだろうと、推測される。
いまどき珍しい「フェンダーミラー」だが、自動車学校の教習車や営業タクシーは、今もたいていコレである。
「死角が少ない」というよりは、「視線移動が少なくて済む」ことが、その大きな理由なのだろうと、ディーラーのセールスマン氏は教えてくれた。
トランスミッションは「電気式無段変速機≒CVT」。
空調コントロールパネルは、運転席右下に配されていて、ドライバー以外が操作することは不可能である。
それは、助手席に乗った酔客が、勝手に空調をいじるのを防ぐための、予防的措置なのかもしれない。
しかしながらそれは、ステアリングホイールの死角になっていることに加え、プッシュスイッチオンリーなので、運転中にブラインドタッチで「細かく自分好みの設定にする」のには、若干のやりにくさがありそうだ。
まあ、それはそれとして。
走らせてみると、ステアリングインフォメーションは悪くなく、良好な視界と相まって運転しやすいことはもとより、ドライビングプレジャーすらも感じさせるフィール!
ちなみにサス形式は、フロントは「マクファーソンストラット式コイルスプリング」で、リヤは「トレーリングリンク車軸式コイルスプリング(3リンク)」である。
加えて、室内は確かな静粛性で、後席に座るお客さんとの会話も弾みそうだ。
このクルマはFFオンリーで、4WDの設定はないが、「S-VDC」と呼ばれる安全制御が功を奏し、スリッピィな冬の札幌の街中でも、緊張することなく安心してドライビングできる。
実際、今回の試乗においても、トラクションコントロールはかなり介入していたが、それをドライバーにキッチリと伝えてくれるセッティングは、フレンドリーであると言えましょう。
後席に佇んでいたニータ氏&尾車氏の意見も、実に乗り心地&居心地がイイと、好意的かつ前向きであった。
約15分間の、札幌都心部の試乗を終えた後。
平均燃費計の数値は9.2Km/Lに向上していた。
また、エンジン始動が「スタート&ストップボタン」ではなく「イグニッションキーひねり」であることも、ひとつの見識だと思える。
それにしても、「JPN TAXI」は、じつに素晴らしく「いいクルマ」であった。
「これのガソリン仕様が安価な価格で、一般ユーザー向けに販売されること」を、私は切望し、夢見る。