泰王驍宗の宿命のライバルとも言うべき阿選の謀反により泰麒は蓬莱に逃れ、驍宗は行方不明となる。景王陽子の支援のもと、延王と延麒の助けをえて泰麒をとりもどし、李斎と泰麒は戴国に戻り、驍宗の捜索を始める。
国家の運命は国王の存在によるのか、あるいは、国王を選ぶ麒麟の力量なのか、はたまた、国王らの元の将軍やその麾下たちの意思や力量によるのか、さては、民の安穏を願う心であるのか。本巻は、繰り返しこのテーマを様々なエピソードで喚起していく。
阿選によって魂魄をぬかれた本編で登場する傀儡、阿選の命令には忠実だが、命令外の事態には対処ができない。この傀儡の存在がその対蹠点となっている。この指示待ち症候群の傀儡の存在による国家機能の停滞は昨今の政治情勢をみるに奇妙に符合していて、どうしたものかと、阿選はなぜ、優秀な麾下たちをすてて傀儡をつかうのか、驍宗ももちろん完璧ではなく独断専行しようとする、こうした指導者のあり方もかんがえさせられる。
「十二国記」のシリーズは、まだまだ続きそうな気配ではある。