映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」
2024年封切りの米国・英国共同作品、アメリカ合衆国が内戦状態に入った近未来を描く。Amazon Prime Videoで期間限定で配信されていたので視聴した。
3選目に入り、FBIを解散した大統領に対して西部と南部の諸州が反対して分離独立を宣言、合衆国は内戦状態に入る。
ニューヨークで市街戦を取材していた3人のジャーナリストは敗色濃い大統領に独占インタビューしようと車に乗ってピッツバーグ、西バージニアを経由してワシントンD.C.に向かう。3人のうちの一人の女性戦場カメラマンのリーに憧れる戦場カメラマンを目指すジェシーも一行に加わって、ロードムービーとなる。途中、リンチや市街戦、一見平穏な田舎町、難民キャンプ、住民を虐殺したらしい一同にであうなどして、西部軍のD.C.攻略拠点に到着した4人(途中被弾したジャーナリストのサミーはここで葬られる)は、大統領には警護隊など一部を残してあとは少数を残すのみとなった状況を聞き、大統領への独占インタビューの願いをはたせず、大統領一派を殲滅する部隊に同行してホワイトハウスに向かう。
大統領専用車を含む車列がホワイトハウスから脱出しようとして部隊が鎮圧したところ、リーは大統領はホワイトハウスに残っているとみなして、ホワイトハウスに向かう。少数の部隊とともに内部に入った3人は、大統領をめざすが、途中、リーは被弾し亡くなってしまう。残るジョエルとジェシーは大統領をみつけ、殺害しようとする部隊を制止して、インタビューを試みる。彼の言葉は「命だけはたすけて」だった。それを聞いたジョエルは「それで充分だ」と。部隊は銃口を向け大統領を射殺する。ジェシーは遺体を囲んで笑顔の部隊のスクープ写真をとる。
追記:蛇足かもしれないが。
この作品の冒頭、大統領は分離独立派を批判し、正当性は自らにあると演説で述べている。そうした大統領の危機的な状況について独占インタビューを狙ったジョエルが、最終的にたどり着いたのが最後のシーンであった。射殺を一旦制止し、大統領の言葉を引き出したが、それは自らの助命であった。それに対するジョエルの言葉はどのような意味だったのだろう。大統領であれ危機的な状況にある場合「助けてくれ」との言葉は人間らしいと言えるだろうが、それに対するジョエルの言葉とその後に続く射殺の許容は、大統領の言葉は「十分でない」という含意となるだろう。大統領の職責とそれに基づく行為により分離独立派により敗北が迫られるまでただただ国家を混乱に導いた責任を最終責任者である大統領が言葉にしなかったことに対する絶望の言葉が「十分だ」ということだったのではないだろうか。
昨今の世界情勢は混沌を極める。トランプ再選という結果となったアメリカの分断もありうる未来だろう。アメリカだけでなく、中国もあるいは、ロシアも分断の可能性はゼロではない。また、様々な国で極右が台頭し、各地で分断することもありうる。隣国韓国の戒厳令未遂事件もその一つだろうし、日本もまたどのような未来が描けるのか、未定の未来としか言えない状況だ。
また、映画に描かれる残虐なシーンの数々は、それぞれ、人間性の一部とも言えるだろう。さて、どのような未来が待ち構えているのか・・・・