この古い東芝製トランジスタラジオ 7TL-204Sの修理履歴です。それぞれをクリックしてください。
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修理(5/8) 修理(6/8) 修理(7/8) 修理(8/8)
このトランジスタラジオの規格が裏蓋の内側に貼られていました。それによると、中波に加えて短波(3.9~12MHz)を聞くことができます。短波を聞く人は多くありませんが、株価などを気のする経済人,競馬予想をする人,そして高層天気予報を聞く人などには欠かせない放送局があります。私は以前登山をしていた時、短波放送の気象通報を聞きながら高層天気図を作成していたことがあります。
このラジオの受信規格など 電子部品などの配置図
ラジオを直すにあたって、回路基板に使われている部品を調査しました。まずは高周波回路ですが、他励式周波数混合回路になっていました。他励式は局部発振用にトランジスタを一個余分に使いますが、安定性があると言われます。少し贅沢な回路と言えるでしょう。局部発信と周波数混合に、それぞれトランジスタ2S27が使われていました。そして、第一中間周波数増幅にトランジスタ2S23が使われていました。これらのトランジスタは、JIS規格前の東芝が製造したものです。2S23は、JIS規格で2SA49となりました。なお、2S27はJIS規格ができる前に製造中止になったようです。
他励式周波数混合発信回路と第一中間周波数増幅回路
下左〇は2S27,下右〇は2S23,上〇は2S27
バリコンは真空管ラジオに使われていたようなエアバリコンが使われていました。当時はまだ真空管ラジオが幅を利かせていた時代だと思われますので、今では普通のトラッキングレスバリコンではありません。第二中間周波増幅回路にはトランジスタ2S13が使われていました。2S13は、JIS規格では2SA53になりました。
真空管ラジオを思わせるエアバリコン 第二中間周波増幅回路 〇は2S27
低周波増幅回路は、三つのトランジスタからなっていました。初段は2S14,PP出力段は2S15Aが2個です。それぞれ、JIS規格では2SB54,2SB56になりました。面白いのは、PP出力段の出力トランスが基板から切り離されて、スピーカーの隣りに単独にあることです。当時はまだトランジスタラジオ用の小型トランスの開発が遅れていたのでしょう。また、OTL回路も実用化されていなかったのでしょう。
右から、2S14,2S15A,2S15A スピーカー部 〇は出力トランス
電子回路を丹念に調査していると、壊れた部品を一つ発見しました。第二中間周波増幅回路のセラミックコンデンサ0.05μFが断線していたのです。電池ケースと接触しやすい部位にあるため、電池を何度も入れ替えする時に接触して切れたのではないかと思われます。次回、このセラミックコンデンサを交換することにしました。
〇:セラミックコンデンサ0.05μFの断線箇所