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達人に出会い、振る舞いを反省

2010年02月04日 | 読書
 『日本語は天才である』(柳瀬尚紀著 新潮文庫)を読む。

 著者は紛れもなく日本語の達人、名人といっていいのだと思う。
 翻訳家として有名であるそうだが、それ以上に本書のテーマ「天才である日本語」を縦横無尽に使いこなしているということが何よりの証明ではないか。

 この書で、たくさんの知らなかった言葉に出会った。
 例えば「利根」…読んだ記憶もなければまして使ったことがない。
 利口と同義ではあるが、根とあることで漢字の奥深さをさらに感じた。
 私などはさしずめ、対義語である「鈍根」だと思い知る。

 ただの博学、物知りだけでは名人とは呼ばない。
 言葉や文の裏側に寄せる眼差しが素晴らしい。少女から感想を引用して、その思いに心を巡らせる箇所も素敵だ。
 そして読書に関して、こんなに的確で印象的な文章を書いている。いつか子どもたちにも紹介したいと思った。

 そもそも本は背伸びをして読むものではないでしょうか。もちろん、本を読むとき、人はうつむく。そっくり返っては読めない。しかしうつむいて読みながら、気持ちは背伸びをする。精神は上を向く。

 第七章の中に「急に『ぶり』が気になって…」という文章がある。
 ここを読んで、そういえば自分もそのことが気になってブログに書き散らしたことがあったことを思い出した。「○年ぶり」「久しぶり」「暮らしぶり」などのぶりである。
 もちろん内容のレベルなど比べることはおこがましいが、なんとなくおなじ発想に立てたことが嬉しかった。

 私の解釈(妄想)は「ぶり←ふり←振り←一振り←一瞬の動きの完結」というきわめて単純なものであったが、「振る舞い・所作」という由来もあることを改めて確かめると、自己の振る舞いについて反省するばかりである。