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今になって『長い散歩』

2010年08月29日 | 雑記帳
 今さらではあるが、BSで放送された映画『長い散歩』を観た。

 公式サイトは→http://eiga.com/official/nagaisanpo/story.html

 例の鬼太郎映画はあったが、実際には映画として緒形拳の遺作と呼んでもいいのではないだろうか。監督の奥田瑛二が緒形の主演をイメージして何年も前から構想していたという。

 児童虐待から幼い子を救い出すことは、自らが招いた家族崩壊の贖罪の旅でもあった。大まかにそんなふうに括ることはできる。
 それを「長い散歩」と名づけ、あまり多くない台詞まわしで表情を静かに描いていく好作品だった。

 主演の緒形はもちろん、抜群の存在感を見せた子役の杉浦花菜、そして重さと軽さのバランスの妙を感じさせた松田翔太が素晴らしかった。
 少女が背負ったぼろぼろの天使の羽根が、最終シーンでも片方とれたままで背負おわれていたことは、将来の暗示か。哀しみの象徴をいつか誰かが外してあげるのだろうか。エンドロールの「傘がない」(歌唱はUA)もぴったりである。

 ところで、以前何かの雑誌で読んだ記憶があることだが、演技について細かい注文をつける監督の奥田が、緒形から反感を持たれ?文句をつけられたことがあったそうだ。その点を奥田は実際に演技で見せたら、緒形は何も言わなくなり従った、という。

 詳細は知らないが、演技者同士としてそういう場で理解できるためのいい例なのかもしれない。映画監督にも様々なタイプがいるが、それが奥田の持ち味ともいえるかもしれない。ただ奥田自身の演ずる役は私が見ているところではあまり多くのパターンがなくて、その点は残念だが。

 考えてみると、テレビでの遺作『風のガーデン』でも共演していた二人だったことを今思い出した。