すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

書名に惚れる

2011年01月13日 | 読書
 いくら中古書店に並んでいたとしても、書名だけを見て即買おうと思ってしまう本は今まであったろうか。
 一応、ペラペラとめくってみて、ちょっとでもひっかかる箇所が目に入ったら考えるのが普通だ。

 唐突に、先日読んだ『ゴールデンスランバー』の一節が思い浮かぶ。
 
 「勢いで行動するんじゃなくてさ、もっと、冷静に手順を踏むのが人間だよ」 

 その通りだよと思いつつ、なぜか背表紙を見た瞬間に買おうと決めたのだった。

 著者が好きだったから?

 いいや、著者は土屋賢二。
 2,3冊は文庫本を読んでいると思うが、ファンではない。
 あの独特の書きまわし…ユーモアというのでもない、自慢や自虐ともいえない、しいて本文中から挙げると

 不可能を可能にした男

 である。一度読んだ人はわかるだろうが、とにかく、自分はやろうと思えば何でもできる人間、ただやらないだけ。能力は無限だが、やる気は永遠に起こらない。なぜなら奥ゆかしいから…といった調子なのである。
 例えばこの一文は素晴らしく著者を表している。

 わたしの一番の自慢は、この謙虚さだ。


 ああ、そうそう、これは「書名」の話であった。

 おそらくこの著者にとって、まさに永遠の壁であり、弾圧者であり、観察対象であり、危険人物であるその人が(普通の人間から見ればごく平凡な人物なのだが)たびたび登場するので、取り上げられたことと思う。それは、

 『妻と罰』(文藝春秋)

 これほどインパクトのある書名に、今まで出逢ったことがあったろうか。