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二、三の原則を突き詰めてみる

2011年01月17日 | 読書
 『教師のための 話す作法』(野口芳宏著 学陽書房)

 12月の会の折に野口先生がお持ちになった書籍で、買い求めていなかったことに気づき、その場で購入したのだが書棚に上げたまま年を越してしまった。
 
 出版社がどのような編集意図、そして購読層の中心をどこに置いているのか予想してみると、都市部で多くなっている新卒者か若年教員なのかもしれない。

 しかし内容が基本的な事項や初級者向け?ということは全然ない。これは、先生の全ての著書にあてはまるのだろうが、つまりは「話す」にかかわる原則とそれに裏打ちされた実践、技術が余すところなく紹介されていると言っていいだろう。

 だから、もしかしたら読み方にも初心者、中級者、上級者という区分ができるのかもしれないと思ったりする。
 まあ読者キャリアからすれば、中級者レベル以上には達していると思う自分だが、例えばということで、こんなふうに分析してみる。

 第三章-9  無用な発言は打ち切る
 第四章-2  子どもの話はすぐに否定しない
 

 この二つの提言は、具体的な授業場面ではいってみれば対立する要素を含んでいる。
 ある子が授業中にふと思いついた突飛な発言を口にしたとき、それにどう対応するか。この二つの原則から導きだすわけだが、様々な状況、実態に対応して働きかけていくことになろう。いうなれば、その塩梅を決めていく手順を頭に入れて対処しなければならない。
 実際にその項に書かれていること、予想できることなどから組み立ててみると次のようになるだろうか。

①「なるほど」といったん受けとめる
②自然に受け流して次にうつる、または、はっきり否定するための流れ(全体に問いかけるなど)をつくる
③部分的に認め、誤りの部分やかけ離れた部分は説明して認識させる
④内容のみだけでなく、意欲や発表の仕方、聞き方等の評価できるところは誉める
⑤仮に、否定され傷ついた様子であっても、回復力を信じる

 と書いていくと、そこにはどうしても「基礎」「下地」が必要であることが見えてくる。
 つまり、子どもの発言の適否や重要度を判断する教材研究、意図や考え方を見抜く児童心理の理解、学びに向かう集団としての学級づくり…である。
 特に学級づくりは効力を発揮することは言うまでもない。

 そしておそらく授業場面でのこうした細かい対応は、日常のそれ以外の場でもまた大きく学級経営全体としても適用させることが可能だろうし、そう考えるとこの本に書かれている二つ三つの原則を突き詰めてみることがかなり有効になるという結論が出せる。