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ミステリから手法を学ぶ

2012年03月16日 | 読書
 読書が趣味の一つであっても肝心なのは読んでいるなかみだろうなと思う。

 「どんな本を読んでいるの?」と訊かれて

 「海外ミステリが好きだな」などと返答できるのは、少し格好いい。

 けれど、当方全くそういう本には縁遠い。
 そもそもミステリそのものにあまり興味ないのだけれど、ついつい新聞広告などに惹かれて、買ってしまう軽薄読書人であることも自覚している。これもその一つだ。

 『傍聞き』(長岡弘樹 双葉文庫)

 「日本推理作家協会賞・短編部門受賞作」「おすすめ文庫王国・国内ミステリー部門第1位」…本屋の店員が「百万部売っても売りたりない!」と叫んでいるというのだ。
 まんまとノッテしまった。

 4つの短編があり、どれもそれなりに巧みで読ませるつくり、文体だなと感じた。
 ただ、ああこれはと途中で展開がわかったのが2編。
 こんなミステリ初心者に判られてしまうのもどうかなあ…まあ、ちょっと純粋な読書でなく、犯人探し的な読み進めをしたからだろうか。そうすれば読み手自身の構えが逆に読書の楽しみを奪っているような…。

 謎解きが最後まで続いた2編は面白い。
 表題作「傍聞き」は、この題名自体にものすごく引きつけられる。
 この意味は、作中ではこんなふうに説明されている。

 どうしても信じさせたい情報は、別の人に喋って、それを聞かせるのがコツ。

 いわゆる「漏れ聞き効果」である。
 この作品では、それが二重三重にあったりするので、そこが秀逸だと思った。

 さて、この「傍聞き」はちょっとキャリアのある(もしくは若くてもセンスのある)教員ならば、学級経営や生活指導の場でよく使うテクニックではないかと思う。
 人伝えに聞くほめ言葉ほど嬉しいものはにないという話もよく聞くし、子どもをその気にさせるためにも、けっこう有効な手法だろう。

 この文庫の解説に、著者へのインタビューの一部が載っていて、興味深い記述がある。著者は自作のアイデアが出てくるポイントを、「なるほど」であると答えている。
 人間の無意識な行動の裏にある心理がわかったときに「なるほど」と思うそうである。

 私たちの仕事もよく観察してみれば、そんな子どもたちの言動が多くあるのではないかと思った。
 そこを見つけて突っ込めば、「傍聞き」のように使える手法がもっと発掘できるのではないか、という気もする。