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幸せ感を得る幸せ観

2022年01月12日 | 読書
 「読み直し」は予習として実にいいものだ。性格が対照的なラジオアナウンサーとの対談で、石川善樹の語る様々な知見がすうっと入ってきた。おそらく読者対象としては20代30代を想定しているのだろう。しかし、違和感なく読めたのは、改めて自分にとってこの分野への関心が長い間高かったからだと納得した。



『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』
  (石川善樹・吉田尚記  KADOKAWA)


 抜群に面白かったのが第4章「科学的に見ると、恋愛と結婚って何ですか?」。石川の結婚に至るまでの過程が語られ、その徹底ぶりはドラマを見るようだった。研究者として初のテーマが「ダイエット」だったのは女性との話題づくり。しかし「ダイエットについて考え始めたら、恋とかどうでもよくなった」と進む。


 「結婚とは、『この人がいい』 じゃなく『この人でいいや』」という結婚観に頷いた。遠い昔に高校の同級生たちと話題にしたことがある。大人数のなか、同様の考えを示したのが自分とある女子一人だったことを思い出す。その考え方と「幸せ」の結びつきは案外典型的かもしれない。自分を俯瞰する見方でもある。


 「僕、悲しいって感情がないんですよ」と石川が語る。極限の状況(例えば家族の死等)までは触れていないが、なぜ悲しい感情がないかを「そもそもいろんなことを『ある』と思っていないから。明日もあると思っていない」と説明する。「期待するから怒りや悲しみが生まれる」とは、まさに一つの境地ではある。


 「多様性」は繰り返されるキーワードだが、本当の価値はどこにあるか。盛んに喧伝されるのは、個々の認め合いという精神論のような気がする。対談で具体的に示された「希少な資源をみんなで争う競争からの逸脱」の意味を、社会情勢や自ら置かれた環境下で考える時「資源のバリェーション」という語が光る。
つづく