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情報から独立するために

2022年02月08日 | 読書
 『AI支配で人は死ぬ。』で養老氏は「『意見』が先で、『事実』が後になってしまった時代」ということを次のように語っている。少し長いが引用する。

 若い頃はいろいろ理屈を言ってみるけど、そうはいかねえよって年寄りは知っているわけだ。でも、今は逆ですからね。SNSが先だから。「意見」なり「感想」なりが先になってて、「事実」が後追いになっている。そのうち、誰かが「意見」に合わない「事実」を見つけてくると、「事実のほうが間違っている!」と言いかねないよ。


 これを読んだ時ふと思い出した。何で見たか失念したが、商品PR戦術で一番効果があるのは「今、これが売れています」というフレーズだということ。確かにノセラレテ買った記憶もあるし、同様の人も多いのではないか。売れているかどうか不明であり、詳しく調べたり聞いたりしないままに、消費行動に走る。


 厳密には「意見」「感想」とは違うのだが、とにかく観念が、言葉が最初にあって、行動化を仕向けている。データを図化したり、ランキングを示したりすることも蔓延している。それは事実のほんの一部の切り取りに過ぎないのに、SNSで膨張し、固定化されていく。注意していないと、その渦に飲み込まれる。



 『ほぼ日』2/6付「今日のダーリン」で、「マツコ・有吉」の番組のことを紹介していた。「ありがたがられすぎているもの」「評価感高すぎ疑惑」といった話題だ。要は、世間の評価に対して個が取り込まれていくという、昔から変わらない現象だろう。今、情報は情報でしかないことを、自分はどこで示せているか。


 前日2/5付「今日のダーリン」をその観点で読むと面白い。「ほぼ日」では金曜日を「インディペンデントデイ」と名づけ、個人的な研究をする一日としている。糸井は前日に「行列に並びパンを買った」。ある面でまさに事実の後追い行動に見えるが、それを研究として意識的に行うから、独立できるのではないか。