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桜と絵本と豆乳と

どれだけ豊かにそのスピーチを

2022年02月10日 | 絵本
 昨年末に某小学校5,6年生向けに「高学年だからこそ読める、高学年にこそ読んでほしい『絵本』のススメ」と題して資料を配った。表紙絵を取り込みながら6冊紹介した。来週他校で読み聞かせがあり、高学年対象なので、そこでも配布したいと見直した。1冊だけ差替えてラインナップに加えたのがこれである。


『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』
  (くさばよしみ編 中川学・絵  汐文社) 

  

 南米ウルグアイのムヒカ大統領の話題はTVで観たし、本の存在も知っていた。しかしきちんと読むのは今回が初だ。抽象的な語句は少しあるが、高学年ではあれば伝わるだろう。もちろん、大人が読んでも説得力ある内容だ。やや漫画チックな絵だが、演説のテーマを理解するための補助的な役割は十分果たしている。


 環境と貧困をテーマにした国際会議。小国の大統領の話に最初は関心を抱いていなかった参加者は、その話を聴き大きな拍手を送った。過度の物質文明が人類の危機を招いていることは誰しも語る内容ではあるが、自らの生き方で示しているというエネルギーが会場に響いたのだと思う。そのエッセンスをどう伝えるか。


 「演説を意訳して子ども向けの表現に変えています」と最終ページに小さく書かれてあり、どうしても説明が必要な語句はないし、その前後の文脈で想像できると言っていい。しかしだからこそ、丁寧に全体像を描くような読み方をイメージしたい。「スピーチ」の基本を振り返りながら、ポイントを定め読み込まねば…。


 まず多用している問いかけとそれに続く文章だ。普通は「間をとる」ことが強調につながるが、疑問形は訴えのスタイルでもあり、少し早めに畳み掛ける手法も効果的だろう。なんといってもキーワードの読み方だ。声の大小、緩急、アクセント…声で説得できるか。「命」「発展」「しくみ」「生き方」そして「幸せ」