クリントンは最後の予備選挙が終わっても、民主党大統領候補戦の撤退を表明せず、オバマは、予備選挙終了後、過半数の代議員数の確定を待って、勝利宣言を行いました。彼のスピーチは既に本戦に向けたものでクリントン陣営を既にライバルではなく仲間とみなして民主党の一体化を訴えたものでした。メディアは、なぜクリントンが勝てなかったかという理由をあれこれ書き並べ、政策公約、キャンペーン戦略、ビルクリントン、様々な理由をあげています。しかし、これだけの長期戦を戦う間に、予備選挙前にはダントツ人気であったクリントンと、殆ど無名であったオバマの人間性とでもいうものが自然と明らかになってきて、結局のところ、オバマの方が人間的魅力で優っていたということが最大の理由であろうと私は思います。マッケーン、クリントンは共に「経験」を売りにし、オバマは経験不足でナイーブであると批判してきたのですが、アメリカ国民はこれまでのブッシュ政治にはうんざりしており、古いポリティクスでの「経験」などむしろ願い下げで、むしろ新しく希望に満ちた時代を待ち望んでいるわけで、そのことが今回の結果に繋がったのだと思います。そんな気分を、オバマはうまく煽り、波に乗りました。「CHANGE」というスローガンは、古い共和党政権を打破し、古いポリティクスを、若くアメリカ初めての黒人系大統領となるオバマが変えていく、という国民の希望のシンボルとなりました。国民が望むその新しい政治にオバマとクリントンとどちらがよりふさわしいかと問えば、答えは明らかです。クリントンにしてみれば、あきらめがつかないのは分からないではないです。彼女にとっては多分、最初で最後の大統領となるチャンスであったであろうし(再出馬の可能性がないとは言えませんが)、予備選前のダントツの人気で、民主党候補は自分だと考えていたに違いありません。そこへ突如、彗星のように現れた若く魅力的な黒人男性がはるか後方から距離を縮めてきて、あれよあれよという間に人気を集め、自分を抜きさっていったのですから、悔しさもひとしおでしょう。しかし、クリントン個人の思惑から少し離れて大統領選を眺めれば、クリントンでは役不足であるのははっきりしています。クリントンは冷静になってオバマに全面協力を申し出なければなりません。民主党がまとまれば、オバマはマッケーンに負ける事はないでしょう。「CHANGE」を求める国民の気分の流れの勢いを、共和党の72歳のマッケーンが押し返すのはちょっと困難であろうと思われます。クリントンは予備選終了後、二日経つのに撤退の表明を保留したままです。今週中に表明するのではないかとの予測ですが、来週に持ち越されるかも知れません。本人以外は、多分ビルクリントンも含めて、もっと早く候補から降りてオバマのサポートを表明すべきだったと思っていると思います。予備選が終わって結果を突きつけられているのに、負けをタイムリーに認められないのでは、評価が逆に下がってしまいます。これまでは粘り強くタフな候補であると思われていたかも知れませんが、この重要な局面でオバマのエンドースのタイミングを逸してしまっては、エゴイスティックな頑固者で理性的な判断力に欠けると判断され、政治家としての適格性さえ疑われてしまいます。クリントンは、胸襟を開いて正直に自分の思う所を述べ、オバマと民主党の支持に全力を尽くすと強い決意を表明しなければ、自分自身の政治生命のみならず、民主党にも大きな傷を残すことに繋がりかねません。穿った見方をする人は、クリントンは、ここで民主党とオバマの足を引っ張って、共和党政権をあえて実現した上で、4年後の選挙で再び大統領候補として選挙に出ることを考えているから、オバマのサポートが出来ないのだという人もいます。もしオバマが大統領となれば時期大統領選は当然オバマ対共和党となってクリントンの出番はないわけですから。しかし、そのようなセコい打算がクリントンにあるとするなら、クリントンは国民の判断力を過小評価しているといわざるを得ません。確かに衆愚政治というように民主主義は、少なからぬ場合で、多数の判断力に乏しい国民の「気分」みたいなもので愚かな決定がなされてきました(戦争などがいい例です)。一割以上のアメリカ人は、オバマの所属していたキリスト教教会の牧師のバッシングのニュースがあれだけ流れていながら、オバマはイスラム教徒だと考えているそうです。国民の多くはそう賢くないかも知れませんが、ただし長期的には国民はやがて正しいことを選択することになります。クリントンが今回民主党の足を引っ張ったために共和党政権となったと評価されれば、4年後にクリントンが民主党の大統領候補になる可能性はまずなくなるであろうと思います。正直は最善の政策であるというのは常に当てはまります。クリントンは大統領候補になれなかったからといって、民主党とアメリカのために大統領として頑張りたいと述べた自身の言葉を反故にするような行動をとってはいけません。それは、クリントン自身の政治家としての自殺行為です。これ以上タイミングを逸することなく、やるべきことをやらねばなりません。そうでなければ、クリントンはむしろ民主党にとって害となってしまいます。私は結局、オバマはクリントンを副大統領候補に指名し、クリントンもそれを受けるのではないかと思っているのですが、これまでのクリントンの行動を眺めてみると妙な破滅的行動をとらないかとちょっと心配しています。
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