蜂蜜に巣材のような不純物が混ざっているのを見つけて、ひと様に渡る品であれば、これはマズイと漉すことにした。
不織布を3枚重ねにして、コーヒーのドリップ式に垂れさせた。
寒いのと2枚で良いところを3枚にしてしまったのとで、ストーブの前に置いたのに、しずくのようにしか垂れない。
仕方ないので不純物は爪楊枝にくっつけて取り除き、もう漉すこともいらないと箸を突き刺して穴を明けた。
そうしてスムーズに蜂蜜が垂れ始めてから、均一な流体にあるまじき垂れ方に気づいた。
どういう力が働いて、落下の途中で少し膨らむなどということが起きるのだろう。
粘度のある塊があって、それがぶらさがったような状態だろうかとも考えた。
ところがしばらく見ていても、確かに垂れているのに、同じ形を保っている。
下から押し上げるような力がかかっているのか、などとも考えてみる。
そうして、ほぼ垂れ落ち、雫だけになってから原因が分かった。
先の縮れた極細の糸が不織布の穴からぶら下がっていた。
粘性が強いから真っ直ぐの落下でも、淀みというのか停滞が起きているということのようだ。
不織布を割り箸で無理やり突き破ったときに、糸が2センチあまり垂れたのだ。
不織布でも糸がほつれるのか!?
テレビのコマーシャルなどでは、トリックアートや、日常ではありえない現象を作り上げて見せてくれる。
以前、水道の蛇口(バルブ)が宙に浮いていて、口から水が勢いよく流れ落ち続けているシーンを見た。
どこで見たのか忘れてしまったけれど、その時の違和感の面白さは強烈だった。
話はずれるけれど、現代文明から離れて暮らしている何々族の数人を東京に連れてきて、彼らの反応を面白がるというテレビ番組があった。
上から目線の嫌味な感じもあるけれど、それは置いといて、彼らが帰国するときに何が欲しいかと聞いてみると、蛇口が欲しいということだった。
見るものがすべからく奇跡の夢の中の状態にしばらくいて、一番印象に残って欲しかったのは、ひねれば無限に水の出る蛇口だったということ。
先の話の宙に浮いたまま、延々と水の流れる蛇口は、おそらく出口より少し細い透明な水道パイプが下から立ち上がり蛇口に差し込まれて固定されていて、水を噴出させているのだろうと、しばらく見てから結論を出した。
この種明かしはたぶん正解だろうと思う。
それで、何がどうしたということになるが、日常の違和感もこの程度なら良いけれど、国会中継の嘘つき答弁を観ていると、『どうしてなんだろう』と謎は解けない。