蜆(しじみ)も浅蜊(あさり)も虫偏が付くということは、虫と見なされていたということだろうか。
帆立貝や赤貝とは次元が違う旨さと私は感じていて、汁物では蛤1番、蜆が2番、3番は浅蜊と思っている。
ところがムール貝を食べた時には、これは別格とほっぺたを落としそうになった。
それはそうと、独り暮らしの私に送って来てくれた蛤は、よそに分けて差し上げるのも気が引けたり、もったいなかったりして、これを機会に蛤を調理できる人間になろうと考えた。
ポイントは塩加減=塩梅と時間を掛け過ぎないふっくら加減に尽きるという結論。
最後の2個は、時間が経ってなんだか苦しそうに見えたので、海水を作って入れた。
そしたら糸状の粘液を吐き出したので、これですっきり生き返っただろうと話しかけたいような気分。
1mmほど口を開けていたので、持ってみると、素早くきゅっと閉じたりして、ほとんど飼っている状態。
10年近く前に、蛤ほどの大きさの淡水産バカ貝だったかを何ヶ月か飼ったことがあるけれど、何が良かったのか悪かったのかも分からないうちに死なせてしまった。
2個の蛤を生き物として観察してみて、初めて分かったことが、蝶番は一方にしかないことや、模様に法則性があることなど。
食べ終わった殻を見て、貝合わせをするには大きさが一致していても絶対に半身分身でないと合わないことも確認できた。
子どもの頃に、蛤の合わさったこぶ部分をコンクリートに擦って二つの穴を開け、その穴を吹いて音を出して遊んだものだが、蝶番をもぎ取った後の細い隙間から空気が漏れて音が出たのだろうと推測した。
そうこうして遊んでから(これも食べ物で遊ぶことになろうか)終いの2個はレシピ通りの時間と分量を守って、ほぼ完璧においしく食い尽くす。