和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

田中冬二・蜜柑。

2009-06-28 | 詩歌
蜜柑について、ちょっと田中冬二の詩にさがしてみました。

ちなみに参考にしたのは、田中冬二全集第一巻(筑摩書房)。

それでは、田中冬二の詩集あとがきより、引用してはじめます。

「詩を書いて二十有余年。
 私は田舎道をひとり淡々と歩いて来た。
 麦打ちをしてゐる村を、
 郭公がなき、椎茸をつくつてゐる山間の村を。
 煙草の干し葉に天候を気づかひ夜半も目ざめてゐるやうな村を。
 私は豆の花を信じた。
 やがて好い実を結ぶあの小さい質素な豆の花を。
 私は小暗いランプを信じた。
 夜半は芯を細目にするランプを。
 そして親しい彼等が恁うして私に詩を書かせて来たのである。」(p301)

詩「海の見える石段」は7行の詩。
そこから2行を引用(p108)

    夏みかんの木の間に あかるい初夏の海
    僕も眺める

詩集「花冷え」にある詩「雨」のはじまりの一行(p173)

    みかんの花がぷうんと匂ひ 暖い雨のけむつてゐる漁港


ちょうど今頃の詩でしょうか

    山国初夏  

 山の傾斜地の林檎園では袋かけをしてゐた

 ほととぎすがないた

 麦の穂波がひかり 桑の葉はあかるくしろくかへつた

 縁先近くの柿の花がこぼれて もう薄暑を感じた

 夜 善光寺の町には 蕨夏みかんさくらんぼ

 それから芍薬や菖蒲の剪花(きりばな)を売る露店が出た 
 槲(かしわ)の葉も売つてゐた

                 (p210~211)
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