昨年は、関東大震災から100年でした。
昨年7月、市で災害関連の講演会がありました。講師は鍵屋一氏。
その中で、私に忘れがたい言葉があったのでした。
『 想定外のことがおこると小学生以下の判断力になる 』
と講師が語り、それがあとあとまで印象に残りました。
それはそうとして、『避難の支援者がいない』という箇所には、
支援者には負担感が強いとして、とっさの場合に
自分から助けを求めることがしにくいことを考慮して、
とっさの場合、声をかけることの重要性を指摘しておりました。
それも別々に、3人くらいが声をかけてくれるとなおよいそうです。
田尻久子著「橙(だいだい)書店にて」(ちくま文庫・2023年11月)
をひらいていたら、その講演を思い出しました。
田尻さんは、1969年熊本市生まれ。熊本市内に雑貨と書店を開店。
とあります。はい。私はパラパラ読みなのですが、
この本は、短文の随筆をまとめた一冊なので、お気楽にひらけます。
そのなかに、『ヤッホー』と題する8ページほどの文がありました。
はい。そこを引用したくなったんです。
「 ご近所さんの顔が見えるということが、いちばんうれしく
頼もしく感じたのは、地震のときだった。
知っている顔が見えて、こんにちは、と挨拶を交わす。
余震が来ると、大丈夫? と声をかけあう。
そんなささいなことで、気持ちの揺れがおさまっていく。
こわいね、こわかったね、一人でそう思っているより、
誰かと言い合うと、こわいが少し淡くなる。 」(p233)
「 地震のときは、ものすごく落ち込んで内側に閉じこもる人と、
動き回っていないと落ち着かなくて、休む間もなく動いている
うちにテンションが上がってしまう人がいた。
私は間違いなく後者で、動きを止めてしまうことが不安だった。
どちらであろうと、平常心でないことに変わりはない。
だから、彼女(ミチコさん)のこの軽口に、とても助けられた。
こわばっていた体がするするとほどけていくようだった。 」(p234)
登場するミチコさんが、どんな人かは読んでのお楽しみ。
うん。それ以外の文にも私に思わぬ拾い物がありました。