桑田忠親氏への司馬遼太郎の手紙。
桑田著『或る蘭方医の生涯』を、司馬さんへ贈ったお礼の手紙が
残っているのでした。
「 ・・・ありがとうございました。
阪大微研の加藤先生からおくられて参りました。
桑田先生の御著書はことごとく読ませていただいた
つもりでございますが、この本が先生の学風とは、
ちょっと風変りなと思っておりますと、
先生の御先祖にあたられるときき、
立斎の後ありと思いました。・・・・ 」
( p103 臼井史朗著「昭和の茶道」淡交社 )
ここに出てくる立斎とは、桑田立斎のことで、
桑田忠親の曽祖父にあたり、幕末の蘭方医だったとあります。
それにしても、『ことごとく読ませていただいたつもりでございますが』
と、司馬遼太郎に言われたら、桑田氏はどんな感慨を抱くのだろうなあ。
それなのに、桑田忠親著「定本 千利休」(角川文庫)を
私などはちっとも読めずにおります。きちんと読めないと
パラリと、本文の最後の箇所を読んだりしてみます。
こうありました。
「 ・・・幾百年の後の世においても、
お茶といえば必ず利休さんとくる。
利休は、日本人の実生活の上に無言の恩恵を垂れている。
気のきいた、しかも深みのある趣向は、みな利休好み、
便利な日用品はすべて利休形であると、さえ言える。
われら日本人の実生活を、正しく、清く、上品に、
しかも最も便利に改革してくれた大恩人こそ利休居士であろう。 」