お墓参りというと、
あらためて、アイさんのことが思い浮かびます。
吉村昭著「三陸大津波」(文春文庫)の
第二章「昭和八年の津波」のなかに、「子供の眼」があります。
そこに、尋常小学校6年 牧野アイさんの作文があったのでした。
東日本大震災のあと、
森健著「『つなみ』の子どもたち 作文に書かれた物語」(文藝春秋)
をひらいていたときに、そのアイさんとの出会いが語られておりました。
ここには、娘さんの栄子さんの語りを、あらためて引用しておきます。
「 栄子の記憶には、アイのこんな習慣が深く刻まれている。
『 母は津波を忘れないために、夜寝るときには、
洋服をきちんと畳み、着る順番に枕元に置いておく。
玄関の靴は必ず外向きにして揃えておく。
避難の際は赤沼山への道を決めておく。
また、お盆のお墓参りでは必ず墓碑銘を読みあげ、
誰が津波で死んだかを口にしていた。
その振る舞いも母自身への津波への教訓であると同時に、
子どもたちへの防災教育でもあったのです 』
・・・・・・ 」(p250)
うん。今回この箇所を引用していたら、
戦後にシベリアへ抑留された過去を持つ、
石原吉郎氏の短い詩を思い浮かべました。
世界がほろびる日に 石原吉郎
世界がほろびる日に
かぜをひくな
ビールスに気をつけろ
ベランダに
ふとんを干しておけ
ガスの元栓を忘れるな
電気釜は
八時に仕掛けておけ