和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『 あやとりの記 』

2024-11-27 | 詩歌
石牟礼道子さんの名前は知っていても、本は未読でした。

渡辺京二著「もうひとつのこの世 石牟礼道子の宇宙」(弦書房)
渡辺京二発言集「幻のえにし」(弦書房・2020年)

石牟礼道子さんへの水先案内人・渡辺京二さんの2冊をひらく。

「 石牟礼さんの作品を若い人に勧めるとしたら、全部勧めるね(爆笑)。
 でもね、『 あやとりの記 』を読んでもらいたい。
 『 あやとりの記 』はいいですよ。これはね、
 どこかの雑誌に最初から児童文学として書いたんだけど、
 もちろん単なる児童文学じゃない作品に仕上げてるんだけどね。
 一応子供向きになてるから入りやすいでしょうね。・・・・ 」
             ( p64 「幻のえにし」 ) 

「 私の考えでは、これは石牟礼さんがこれまで書かれた
  作品のうちで最高のものです。完璧な仕上がりといってよく、
  しかも包含するものが非常に深い。・・・・

  その描写の魅力をうかがうために、
  ひとつだけ情景を取り出してみましょう。
  みっちんは火葬場の岩殿に興味をもっていて、
  その日もまわりの松の幹にかくれて様子をうががっているのですが、
  岩殿はそれを知っていて木苺の蔓をさし出したりして
  少女を釣り出そうとします。みっちんがなかなか出て来ないので、
  岩殿は『 大寺(うでら)のおんじょ 』の唄を歌い出します。
  これは78行にわたる即興の物語詩で、大変面白いものですが、
  爺さまの唄い躍る姿につられて、みっちんは思わず
  『 おんじょの舟をば 曳いてくる ほっ ほっ 』と、
  唄の最後のフレーズを口真似しながら跳び出してしまうのです。

  この情景はぜひご自分でお読みいただきたい。
  そうすれば、こんな情景はいまだかつて
  日本近代文学で描かれたことがなかったという事実を、
  心からご承認いただけるものと思います。   」
           ( p64∼65 「もうひとつのこの世」 )

はい。わらべ歌を読んでいると
「ちなみに、作中に出て来る民謡風の唄はみんな作者の創作であります。」
          ( p59 「もうひとつのこの世」 )

という指摘も気になるのでした。
これならやっと『 あやとりの記 』(福音館文庫) が読めるかもね。         

 
コメント
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