和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『 旅の絵本 』と『 河童の三平 』

2023-02-14 | 絵・言葉
安野光雅著「旅の絵本」を、
はじめてひらいたとき、私はつまらなかった。

はい。大村はま・安野光雅対談を読んで、
なるほど、なるほど。と合点したしだい。
そうすると、そこから、連想がひろがる。

はい。ゆっくりと時間をかけてひろがる。
たとえば、私が思い描いたのは、掛け軸。

床の間に、掛け軸がかかっているイメージ。
季節で掛け軸を替えるのが本来でしょうが、
一年中ほとんど同じ掛け軸の時もあります。

そのひとつ、水墨画の山水を描いた掛け軸。
掛け軸の下には川の水が流れていてだんだん、
掛け軸の上にゆくにしたがい深山へ導かれる。

その川に橋などがかかっていて、そこを人が
渡っていたりすると、奥には人家があったり。

はい。安野光雅著『 旅の絵本 』というのは、
発想が同じなのじゃないのかと思ったわけです。

掛け軸の水墨画のような世界を、カラーの絵本で表現している。
そう思えば、連綿と続く日本の絵の表現の流れとつながりそう。

はい。ぼんやりしていると、もうひとつ思い浮かんだのは、
水木しげる著「河童の三平(全)」(ちくま文庫)でした。
うん。そのはじまりを今日は引用したくなりました。
こちらは、マンガですから、当然言葉もありました。
はじまりは

「 ここは5年か10年にひとりかふたりの
  人しかはいってこないという山奥である。
  そこに一軒の家があった・・・・     』

こうして、山の傾斜に藁ぶきの屋根の家がありました。
お爺さんと主人公が住んでいるようです。お爺さんが、

「 おまえはきょうから小学一年生として村の小学校に入学する 」

主人公は、河原三平。笹原をザワザワザワと手でわけて学校へ。
 「  学校まで10キロもあるのだ  」

そんなある日、三平は川に魚つりに行き、舟でねむってしまいます。

「 三平が、ふつうの子どものように、10時間ねむればしぜんに
  目がさめるというのなら、問題はなかったが三平は生まれつき
  一度ねむると、人がおこすまで目がさめない子どもだった。 」(p15)

 
「 なん時間 いや なん日間ねむりつづけたのであろうか・・・
  船はみょうなところへながされていた            」

はい。このp16の絵が、川を中心に切り立った奥深い山間が描かれています。
その川の真中に舟がすすみ、グーグーと鼾が聞こえます。


佐藤坊やのことを、思い浮かべているうちに、
水墨画から河童の三平へ思いが広がりました。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『 旅の絵本 』の魅力。 | トップ | 『 作文の研究じゃいけない... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (1948219suisen)
2023-02-14 16:11:41
確かに水墨の山水画は半覚醒状態で眺めていますと異次元に誘われますね。川も山もこれ以上ないくらい単純化されていますから、いくらでも妄想することができます。これは言葉を省略した本のようなものだと思います。その主人公はまだ世間をしらない子供であることも必須要件かもしれません。
返信する
こんにちは。 (和田浦海岸)
2023-02-14 17:04:43
こんにちは。水仙さん。
コメントありがとうございます。

ちょっと、気になっていたのですが、
藤本ますみ著「知的生産者たちの現場」。

この本のあとがきに、ありました。

「この本のもとになったのは、
『 わたしの秘書修業 』という連載記事で、
『天理時報』(天理教道友社発行の週刊新聞)に
 のせていただいたものです。

 1回分が四百字詰原稿用紙5枚のエッセーで
 16回(昭和54年1月14日から4月29日まで)
 つづきました。・・・    」

はい。水仙さんが読まれていたのは、これですね。
返信する
Unknown (1948219suisen)
2023-02-14 17:34:27
あ、それですね。昔のことで私も記憶が朧でしたから自信がなかったのでしたが、やはり天理時報に連載されていたのでしたね。一宗教新聞でしたが、結構読み応えがありました。探してくださりありがとうございました。🙏
返信する
こんばんは。 (和田浦海岸)
2023-02-14 17:45:51
こんばんは。水仙さん。
再コメントありがとうございます。

次回のブログは、
奇遇なめぐりあわせ・・・。
を思い描いております。
返信する

コメントを投稿

絵・言葉」カテゴリの最新記事