和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

児童詩と、一流の画家。

2023-03-06 | 本棚並べ
詩を読みかえすことがあります。
読み返すたび違ったことを思う。
はい。そんなことありますよね。

「どの書物を読むといっても、学び初めのころは、
 片っぱしから文章の意味を理解しようとしないほうがよい。
 まずだいたいにざっと見て、他の書物を見、あれやこれやと読んでは、
 また以前読んだ書物に返りながら、何べんも読むうちには、
 始めにわからなかったことが、少しずつわかるようになってゆくものである。」

はい。これは本居宣長「うひ山ぶみ」(佐々木治綱訳)からの引用。
『始めにわからなかったこと』で今回思い浮かんだことがあります。

それを、題してみるならば『 児童詩と、一流の画家 』。
思いついたので、忘れないうちに書きこんでおかなければ。

『竹中郁全詩集』(角川書店・昭和58年)に
『竹内さんのこと』と題して井上靖さんが書いたなかに、
戦後の童詩雑誌『きりん』創刊の頃が語られていました。


「私たちは毎日のように・・集り・・・
 尾崎書房はふしぎな集会場であった。そこに居る、と誰も彼もが、
 
 やたらに贅沢な気分になり、贅沢な企画を樹てた。
 そして、それがまたふしぎに実現して行った。・・・・

 脇田和、吉原治良、須田剋太、村尾殉子、伊藤継郎、
 山崎隆夫、松岡寛一、小松益喜、山川勤次氏等、
 一流の画家たちがみな応援してくれた。

 こうした人たちもまた、多少狐に化かされていたのに違いないと思う。

 私たちが手を振ると、それにつられてふらふらと、
 私たちのところに引き寄せられて来るようなところがあった。

 安西冬衛、小野十三郎、杉山平一、坂本遼、
 こうした人たちも同じであった。 ・・・・        」(p709)


ここに、『一流の画家たち』とあるのですが、
私には、須田剋太さんの名前しかわからない。
分からないながら新聞記者だった井上さんが
『一流の画家』というのだからそうでしょう。

画家といえば、杉山平一の『竹中郁の詩』に
こういう箇所があったのでした。

「・・竹中郁は、歌う詩すなわち音楽的要素から
 全く離脱したところから出発している。歌わない詩にしても、
 一般ではなお、ことばのおもしろさで書かれるのに、

 竹中の場合は、全く新しいことばにより絵をかくという、
 きわめて視覚的要素の強い作品が主流をなしている。・・ 」

 ( p147 「竹中郁詩集」現代詩文庫・思潮社 )

この文には、こうもありました。

「 しかも、中学で画家小磯良平と同級となり、
  共に洋画に親しみ画家を志したりしたことが、
  彼をしてことばで絵を描くふうの詩を成さしめた
  大きな原因と見ることができよう。・・・     」(p148)


竹中郁氏にとって、絵は親しいどころじゃなかったらしい。

『 やたらに贅沢な気分になり、贅沢な企画を樹てた。
  そして、それがまたふしぎに実現して行った。・・  』

こう井上靖さんがいうのですが、
ああ、これかもと思い当たる本。

『 全日本児童詩集 1950 』(尾崎書房・1950年5月25日初版)。
この編集責任者は14名おりました。

 川端康成・林芙美子・与田準一・丸山薫・村野四郎・梅木三郎・阪本越郎
 久米井東・井上靖・安西冬衛・小野十三郎・竹中郁・坂本遼・足立巻一

『さしえ』の箇所には12名の名前があります。

 小磯良平・前田藤四郎・吉原治良・田川勤次・井上覚造・池島勘治郎
 川西英・沢野井信夫・須田剋太・津高和一・山崎隆夫・早川良雄


はい。私には、小磯良平と須田剋太の名前しかわからない。
『そおてい考案』として一人の名前・竹中郁がありました。


何よりもドキドキしたであろうことは、
子どもたちが書いた、児童詩のそばに
一流の画家が、『さしえ』を描いていること。
『それがまたふしぎに実現して行った』こと。





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2 コメント

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画家 (きさら)
2023-03-06 22:59:18
小松益喜さんは 神戸の北野町界隈を良く描かれていたので 彼の絵には馴染みがあります。
吉原治良さんも 津高和一さんも 関西の方です。
津高さんは 1995年の阪神淡路大震災で亡くなられたそうです。
川西英さんは 版画家で神戸の街を描かれています。

竹中郁さんも神戸ご出身ですよね~
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こんにちは。 (和田浦海岸)
2023-03-07 13:23:10
こんにちは。きさらさん。
コメントありがとうございます。

きさらさんがご存知の画家がいて、
こちらも引用した甲斐があります。
画家についてコメントありがとうございます。

さてさて、それらの画家がさしえを描いた
『 全日本児童詩集 1950 』(尾崎書房)
『 全日本児童詩集 第二集 』(むさし書房)
は、古本でも手に入りにくい。
関西の図書館なら、ひょっとして、どこかで、
見ることができるかもしれません。

きさらさんは、絵を描いているから、
きっと楽しめることと思います。

第二集の、さしえメンバーには、
秋野不矩の、名前もありました。

わたしは、この2冊を幼稚舎文庫の
廃棄本として古本で購入しました。
表紙の背も割れて、のどもパッカリ。
それでも、手に入れて喜んでいます。

今日のブログは、
きさらさんにコメントをするようにして、
その時代の竹中郁を紹介してみることに。
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