和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

書評百年のスタンス。

2023-11-16 | 書評欄拝見
朝日文庫の鶴見俊輔著「期待と回想 語り下ろし伝」を
せっかく古本で買ったので、本文をめくってみる。

その第9章「編集の役割」だけを読むことに。
なんてね。私はこの章だけで満腹でした。
9章の最後を引用することに。

「私は本を読みながら青線・赤線を引くんです。
 それが編集だという考え方もできるでしょうね。
 そうすることでもう1つの本をつくっている。

 スキー場で上から下を見下ろすと、凸凹が見えるでしょ。
 その凸凹をどうやって走り抜けるかを考えるように、
 本を読むこともその凸凹を走り抜けることなんだね。

 あらゆる言葉が均等に並んでいたら、本なんて読めるわけないんです。

 ・・・・もとのテキストのどの箇所をこう解釈したと明示すれば、
 ゆがめたということにはならない。
 たとえゆがめたとしても、ゆがめた証拠はのこる。 」(p526~527)

はい。目からウロコ。
「 本を読みながら・・・線を引くんです。それが編集だ
  という考え方もできるでしょうね。 」

はい。そういうことから編集がはじまっているんだ。
うん。鶴見さんの語りの身近さワクワク感がでます。

書評についてもありました。
新聞の書評委員をしていた経験を話したあとでした。

「・・問題は時間なんです。
 本が出てから、二週間のあいだに書評を書かなければならないでしょう。

 読んでみて重大な見落としは、10年、20年の幅をもって現れるんです。
 その期間に重大な見落としがあったといえるような、
 そんな自由を与えてくれる書評欄がほしいですね。・・」(p523)

「原因は時間だと思います。
 百年の幅をもって書評をしてもいいという欄ができればいい。

 それも旧著発掘だけじゃなくて、新解釈を混ぜたようなかたちで。

 いまの短い書評でも『この本おもしろいよ』と
 責任をもっていえますが、その程度のことです。・・ 」(p524)


なんだか、70歳からの読書の腰の据え方を聞いているようです。
津野海太郎著「百歳までの読書術」を読んでるような気になる。

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