和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『ええ、まだあります』と

2022-06-14 | 先達たち
徒然草を読むのに、シロウトの私には文庫一冊あればよし。
島内裕子校訂・訳「徒然草」(ちくま学芸文庫・2010年)。

島内裕子さんが、徒然草へ旅のツアーコンダクター。
くだけて言うなら、修学旅行のバスガイド(古い)。

はい。どんなガイドさんなのか?
ガイドさんの自己紹介が聞きたい。

はい。そんな我儘を聞き届けてくれました。
島内裕子著「兼好 露もわが身も置きどころなし」
(ミネルヴァ書房・2005年)日本評伝選の一冊。
その本の「あとがき」での自己紹介。

「多くの人がそうであるように、
 徒然草との最初の出会いは、中学の終わりか高校の始め
 頃の国語の授業だった。

 その時、この作品の清新さに、まず心打たれた。
 これが六百年以上も前の時代に書かれたものとは、思えなかった。
  ・・・・
 それ以前の『若草物語』や『赤毛のアン』や『秘密の花園』の
 世界から、いつのまにか読書の好みも変化していた。

 教科書に出てくる徒然草は、簡潔で多彩ないくつもの短い章段からなり、
 『パンセ』や『侏儒の言葉』のような断章形式が何とも魅力的だった。

 『この作品を、一生研究してゆきたい』と、
  十代の半ばで思い定めたのは、今振り返れば不思議な気もする。

 けれども幸いこの気持ちは揺らぐことなく、こうして兼好の評伝を
 書き終えるまでの長い歳月を、いつも徒然草は私の傍らにあった。 」


はい。この後も肝心な場面がありますので、
もう1ページ分を引用してしまうことに。

「だから、十代の終わり頃から読み始めた小林秀雄経由で、
 モーツァルトやランボオに出会い、大学生になってから
 美術展や音楽会に出掛けて、ヴァトーやショパンを好きになっても、
 それらのすべてが、時代も場所も越えて徒然草の世界と響き合い、
 徒然草はますますみずみずしい姿で絶え間なく生成してゆく、
 一つの生命体であった。」

うん。この次には、大学院の口頭試問がひかえておりました。
そこも引用しなくちゃ終わりにできません(笑)。

「ところが、いざ専門的な研究に取り組み始めると、
 徒然草と兼好がかなり固定化した捉え方をされていることに、
 違和感を感じずにはいられなかった。・・・・・・・

 それならどのような観点と方法で徒然草の研究をすればよいのか。
 
 忘れることができないのは、大学院の口頭試問で、秋山虔先生が、
 『研究者として、ずっとやってゆく決心はありますか』とお聞きになり、
 
 それを承ける形で今は亡き三好行雄先生が、
 『徒然草って、まだ研究することがあるの』と質問なさったことだ。
 
 一瞬、『不合格かしら』という不安が心をよぎり、
 返答に窮していた時、

 『ええ、まだあります』と久保田淳先生が一言おっしゃって、
 急にその場の雰囲気が和らいだ。

 ほんの一、二分の出来事だったが、この時の先生方の、
 厳しくも暖かい励ましが、ずっと研究の支えとなっている。 」
 
                   ( p299~300 )

はい。こうして格別の案内人を得たのですから、
ここでは旅をガイドさんと一緒に楽しまなきゃ。



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2 コメント

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こんにちは(^^♪ (のりぴー)
2022-06-14 16:03:38
名ガイドさんのバスに乗り合わせて、のんびり旅を楽しみたい気分になってきました~~
返信する
徒然草文庫旅。 (和田浦海岸)
2022-06-14 16:52:41
こんにちは。のりぴーさん。
コメントありがとうございます。

名ガイドさんとめぐり会えたので、
時空を超えた、徒然草の文庫旅へ。

ここでは弥次喜多道中つれづれ旅。
うん。名ガイドさんの指摘からの、
バトンつないで、いざいざ文庫旅。
序段~最終段まで、はしょっても、
手抜きも何でもつないでいきます。
楽しい野次コメントも合いの手に、
声援を背中にバカもおだてりゃで、
無事ゴールするまでのおつきあい。
はじまりはこんな調子でスタート。
返信する

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