和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

鳥の来て。

2019-05-23 | 三題噺
本棚から
「橘曙覧全歌集」(岩波文庫)をとりだす。
「独楽吟(どくらくぎん)」の箇所を開く。

一首引用(p180)。


 たのしみは 常にみなれぬ 鳥の来て
    軒(のき)遠からぬ 樹に鳴きしとき


鳥といえば、最近思い浮かぶ本二冊。

「中西進の万葉みらい塾」と「災害と生きる日本人」。

まずは、「みらい塾」から二か所引用。

「人間の言葉は、鳥の鳴き声を勉強して
考え出したというお話もあるのです。
鳥どうしはいろいろ会話をしていると考えて、
人間もあれと同じことをやろうと思った。
それぐらい人間は鳥の鳴き声に
耳を澄ましていました。・・・」(p146)


学校で生徒と質問をしている箇所には、
こんなやりとりがありました(p43~)。


中西】 ・・でも、人間が泣くのと、
千鳥が鳴くのとは同じですか、ちがいますか。

C君】 ちがう。

中西】 ちがうでしょう。
ところがそう思っているのは、現代の人たち。
昔の人たちは、いっしょだと考えていました。
『なく』って同じ言葉でしょ。

C君】 ・・でも漢字がちがう。

中西】 そうだね。漢字がちがう。
そう思う人、手を挙げて。うん、たくさんいるね。
だけど漢字は、中国から借りてきた文字です。
昔から日本にあったわけではない。
昔から日本にあったのは『なく』っていう言葉。
中国ではちがう漢字を使う。
中国人は鳥はこう、人間はこう、と考えた。
けれども、日本人は鳥が鳴くのと、
人間が泣くのとは同じだと思った。
『なく』のは全部いっしょ。
漢字を勉強して、それぞれがちがうと
考えるのことも大事だけれども、
もっと広いところで、鳥たちも人間も
同じだなって考えることも大事ですね。
(~p44)


もう一冊「災害と生きる日本人」では
中西進氏との対談で、磯田道史氏は

中西】 特に小鳥が鳴いているのは、
ほとんどが恋でしょうね。・・・・・

磯田】 最近はツイッターで、浅いさえずりを
する人がずいぶん増えました。
万葉集に歌われている歌は、人の心を
かなり深いところから汲みとっています。
鳥が空で生きよう、生きようと
一生懸命さえずっている。
空からこぼれ落ちてくる音を、
万葉集を通じて聴いている感すらありますよ。
・・・(p62)


三冊を並べてみると、なんだかなあ、
令和の宴で、楽しみを味わうような。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 梅のように。 | トップ | 『コ』? »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

三題噺」カテゴリの最新記事