映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

ドイツ参謀本部  渡部昇一

2008-09-21 22:50:16 | 
一昔前の大ベストセラーに「知的生活の方法」があった。渡部昇一氏の読書遍歴と読書生活のための理想的環境が書いてある本であるが、その中で「ドイツ参謀本部」を作り上げる過程が書いてあり興味深く読んだ。
数多い歴史の新書の中でも、楽しめる本である。

17世紀初めの「30年戦争」をスタートにプロイセン王と軍隊の関係を記述した後、19世紀入る直前からのナポレオン進攻への警戒と対策としてのシャルンホルストによる参謀本部設置案について述べられる。1806年イエナの戦いに敗れた後、ティルジットの和約でプロイセンはナポレオンに領土の半分を取られる。
この後初めて参謀本部がひそかに設置される。

ナポレオンは主要戦場にできる限りの火器と兵力を集中させ、相手を叩いて追撃を図るのだが、プロイセンの参謀長グナイゼウは決戦を避け、退却することも手段に選び、相手に損害を与えつつ消耗させたうえで逃げる作戦をとる。
実際14回の戦いの内11回はナポレオンは勝っているのだが、フランス軍隊の数は着実に減っていたし、プロイセン軍の敗者たちはまた新たな戦いの戦士へと変わる。有名なワーテルローの戦いでも、英国ウェリントン軍と戦っているナポレオン軍を、一昨日負けたばかりのプロイセン軍が攻めて勝利をつかむのである。英国軍は応援がなければ負ける寸前の状態であった。

ナポレオン戦争以降も、参謀本部は平時においても、近隣諸国の軍力を徹底的に調べ、それに備えての動員計画を科学的に立てていた。
ナポレオン戦争を研究して、戦争の中に存在する一定の法則があると論じたジョミニとともにクラウゼビッツはその重要人物の一人で、「戦争とは他の手段をもってする政治の継続」という「戦争論」に達する。

そのクラウゼビッツの理論を具現化させたのが参謀長モルトケである。
宰相ビスマルクとの名コンビは歴史的にも有名すぎるくらい有名だ。
基本的には主戦場への戦力集中というのはナポレオン的である。それを鉄道を使っての分散進撃、包囲集中を図るわけである。また各戦地に同じ程度の能力を持った司令官を送り込み、彼らに自由裁量権を与えた。

ナポレオンは自分が先頭になって指揮した戦いはほとんど勝っているが、それ以外は負けている。食料、運搬、気象状況などのスタッフを持たず、ひたすら自分のリーダーシップだけで勝っていた。一方モルトケは戦術的には現地の司令官の自発性を重視した。大局的計画は立てても、予測できないことが戦場においては次から次へと起こるので、戦術を詳細に決めすぎるのはいかがなものと考え、現地の司令官の意思を重視した。

結局あまりに強いプロイセン軍を見て、他国も同様の参謀本部を置くようになった。クラウゼビッツの「戦争論」をフランスが知るのは普仏戦争以降で、フランス軍がくやしがったという話もある。しかし、戦争もないのに人ばかり増え、次第にドイツ参謀本部も肥大化した組織になり、かげりが出始めたようだ。

人員の配置計画など実務に非常につながっていることも多く、これからも再読したいと思う。



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サウスウェスト航空  破天荒

2008-09-21 17:51:34 | 
サウスウェスト航空は米国の航空会社である。
格安運賃と最良の顧客サービスで名高く、利益率も高い。
その経営を書いたのが「破天荒」である。建て前よりも本音の世界が従業員の末端まで行き届いている超優良企業だ。

著者によれば
1.サウスウェスト航空の飛行機は運賃が安いだけでなく、運航は時間通りで、カウンターでまたされない。
2.ピーク期とオフピーク期の運賃体系の制度をとる。
空っぽの飛行機を飛ばすよりも、ヒューストンからダラスまでの金曜日夜便を10$で提供する。
3.航空市場をカバーするには、価格よりもビジネスアワーでの頻繁な運行を期待する利便性優先の顧客、低運賃を望み運行時間には柔軟な顧客の両方を満足させる必要がある。
4.シェアを伸ばすことではなく、コストを抑えて最大限の利益をあげることにこだわる。売り上げを伸ばそうとすると、それに見合わないコストが増える。
5.サウスウェスト航空は路線の多様さと便数の多さを誇っている。またどの路線でも格安運賃を設定している。
6.購入する飛行機はボーイング737型に限定している。
訓練が単純化されるし、その整備士を含め従業員はその機種のみ知り尽くせばよい。購入する時の商談も有利になる。
7.機内食はない。ゲートでコーヒーとパンを出す。低運賃で時間通り移動できて、荷物の扱いもよければ、サービスが多少少なくても問題にしない。
8.平均飛行準備時間は20分以下、他社の半分(飛行機が到着してから乗客の登場が完了するまでの時間)
9.国際路線を開きたいとか、ジャンボ機を使いたいとか思わない。
10.プロはいらない。笑顔でてきぱき仕事をする人がいい。
11.従業員に多くの権限が与えられる。
12.座席は割り当てない。搭乗券はプラスチック製で何回でも使える。
13.スピードとは他社が数ヶ月でやることを数日でやること
14.会社の使命を伝達する文章は社内のいたるところに掲示される。それを見るたびに何が重要なのかを思いだす。
15.あるアイデアを思いついたら、より良いものにしようとするだろう。アイデアは簡単に説明できるものほどよいのだ。情報伝達もひたすら繰り返す。一貫性があること、シンプルなこと、繰り返すことがすべてだ。
16.チケットレスシステムでは、フライト時間までに空港に来ればよい。事務手続きの減少でコストを削減できる。
17.広告を利用して、低運賃、頻繁な運行、定時到着、無事故記録、機内での愉快なもてなしを宣伝する。

それでも顧客よりも従業員を優先するといっている。イベントごとは従業員同士で派手に準備する。
シンプルですばらしい会社経営である。
学ぶことは多い。

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ポールニューマン  評決

2008-09-21 13:21:28 | 映画(自分好みベスト100)
ブログの映画評も30となったのでとっておきの傑作にする。
ポールニューマンの長い映画人生の中でも、ピークと思われる時期に演じられた「評決」である。法廷物としての作品のできも完璧である。

酒びたりの弁護士ポールニューマンは、葬儀場で遺族に事件の処理を任せてくれと営業するような自堕落な姿に落ちぶれている。
そんな彼に4年前の医療事件の訴訟の話が被害者の妹からくる。被害者は、出産時の処置が悪く、植物人間になってしまい子どもも死んでしまう。まともな施設にいくとなると5万$も必要となる。他の麻酔医に「あれは医療事故だよ」と聞いて勝算を得た彼は裁判を引き受ける。相手の病院はカソリック教会系の名門である。名門法律事務所が顧問についている。
訴訟後すぐ和解の話が相手からだされる。21万$という好条件だったが、被害者の現状の姿をみて心を痛めたポールは和解を断る。裁判が始まるにあたり、裁判官を前にして再度和解話がでたが断った。
金銭面に乏しい依頼人の家族は和解話を断ったことに腹を立てる。また、証人として依頼した医師が突然遠方に旅行に出る。審理延期を裁判官に持ち込むが断られる。再度和解に原告側から持ち込もうとするが断られる。

弱気になった彼を慰めたのは、バーで知り合ったなぞの美女シャーロットランブリングであった。
裁判に入っても不利は続く、しかも裁判官とけんかをしてしまい心証も悪くなり八方塞となる。。。

これでもかこれでもかとポール側はやられる。名優ジャックウォーデン演ずる仲間の弁護士となぞの美女シャーロットがポールを支え腕利き相手法律事務所に対抗するが、話は意外な展開を見せる。
名作「ハスラー」でも落ちぶれたビリヤードプレイヤーのポールニューマンを支える美女と怪優ジョージCスコットの二人がでてくる。あの作品当時はポールは若々しい乱暴者的においをプンプンさせていて、演技的にはスコットやポールのライバル役ミネソタファッツに存在感があった。
この作品では「スティング」あたりから増してきた男の円熟味がピークに達して、ダメ男を演じるのだけれども、最高の演技と存在感を見せる。「ハスラー2」でオスカー主演賞をとったが、1作目とくべると盛り上がらない2作目だったので、「評決」をポールのピークと考えるべきであろう。

シドニールメットには「十二人の怒れる男」という法廷物の名作がある。
ただ、これは陪審員の部屋の中だけで展開される話であり、広がりはない。あの映画では、ヘンリーフォンダの弁に動かされて、徐々に一つの方向に進んでいく動きがあったが、今回は最後の最後まで有利にはならない。
そんなストーリーの展開が非常に面白い。

「ロードトゥパーディション」でマフィアの老親分を演じて、最後の存在感を見せたポールニューマン。もう見れないのが残念だが、中年以降のピーク時の作品をみて彼のよさを再認識したい。
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アイデアマラソン  樋口健夫

2008-09-21 08:41:15 | 
加藤昌治「考具」という本があった。考えるための道具としてさまざまな手法が紹介されている本で役に立ったのだが、その中で初めてアイデアマラソンという概念を知った。
三井物産の社員であった樋口健夫氏の本を購入したら、結構文の波長が合ったので結局5冊書棚にある。「アイデアマラソン仕事術」が行動様式ということで一番ためになったが、アイデアマラソンの基本をここに記しておきたい。

1.アイデアマラソンノートを常に携帯所持すること
2.毎日最低一個ずつ、アイデア発想を出し、できれば周囲の人に話し、ノートに記帳すること
3.ノートには①日付②大分類③発想連続番号④アイデア発想バランス数⑤発想の内容をかく

それに加えて、ノートを一本化すること。細かく書きすぎないこと。絵を入れること。が強調されている。
まずは「100個の発想を2ヶ月以内に出すこと。」と主張し、身近の筆記用具や家電製品、家庭内のインテリア物品などに関することで発想を生むのをきっかけにしたらとしている。

比較的昔から筆まめな方ではある。仕事に関するノートは一本化して、その日にやること、その日にあったこと、会議の議事録、商談の内容はすべて一冊に書き込む。日誌のように利用している面もあり、かなり細かく書く。しかし、ノート携帯が難しい場面がある。そのときはポケットに入れてある小さいノートに筆記する。電車に乗っていたりする時は、そのノートに書き込んでいく。ちょっとした発想や突如こうしなきゃと思いつくことも書いていく。
完全な一本化は難しいようだ。本来であればアイデア専門のノートもと思うが、これは長続きしない。

毎日のように書いているが、深酒をして脳細胞が爆発していると書けない。気合で朝は会社に行くが、昼過ぎまでペースが戻らないからだ。
8月の終わりに週に4日外での飲みがあった週があった。どうしても調子がでない。飲んでいる最中はいいけど翌日がまったくダメである。そういうこともあるので、もともと家ではイベント事以外は飲まないようにしている。もっと飲む回数は減らしてもいいのかもしれない。他人事ながら毎日のように飲んでいる人から発想はでるのかな?といつも思うが、普段会っていない人との会話から学ぶことは多いからそれはそれでいいのかな?勝間女史ではないが、本当は酒が入らないランチミーティングが有益なのであろう。

ここに来て急に書評(というか読んだ本で気になったこと)を集中して書いている。これは先が長いが年内150本が目標。最終1000はのせたい。今ある仕事用一冊ノートの最後の方から順番にアイデアマラソンやってみるか。目標はもちろん2ヶ月で100本めざして



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ジャッキーブラウン  タランティーノ

2008-09-21 06:59:26 | 映画(洋画 99年以前)
主人公ジャッキーブラウンはスッチー、ブルーのスッチーの制服が良く似合う。
航空会社のコマーシャル風の音楽にのって颯爽と登場する。
しかし、裏では運び屋の一面がある40代の美人独身女性。黒人である。

サミュエルジャクソン、ロバートデニーロ、マイケルキートンといった主演級が脇に回って裏稼業と警察の対決を描く
ジャクソンは武器の裏流通を仕事にしている。彼はある意味慎重で、以前自分の仕事にかかわりあった捕まった人間は、いつか自分の悪さを話しかねないと信じて、仮に刑務所にいてもそれを強引に保釈させて殺す。日本にはない保釈専門の金融業者というのがいて、それもストーリーには大きくかかわりあう。
ジャッキーは運びをしていたとき、マイケルキートン捜査官の職務質問を受ける。バッグの中には多額の現金と麻薬があり、身柄を拘束される。ジャクソンはいつものように保釈屋に依頼して、ジャッキーを保釈させ、その間に殺そうとするが、そのたくらみは見破られて、ジャッキーの逆襲を受ける。

ジャッキーに一目ぼれした保釈専門業者、ジャッキーに司法取引を持ちかけるマイケルキートン、ジャクソンの仲間ロバートデニーロがジャッキーに絡みストーリーは進んでいく。。。。

ポイントは司法取引だ。囚人が今の現状に嫌気がさすと、昔の仲間の悪さをばらして、自分の減刑をはかるという行為は日本では聞かない。ばれるのを恐れる人、ばらそうとする人、一番悪いやつを捕まえようとして取引を企てる司法当局の葛藤がこの映画のテーマだ。
最近は規制を受けているというが、以前はやくざの出所の時には、ものすごいお迎えが留置所前であったと聞く。それは長い間のお勤めの時によくぞみんなの悪さをしゃべらなかったという意味も込められていたのかなと感じた。もっとも司法取引なんて行為のない日本では、しゃべってもうまみがないからしゃべらないだろうけど。。。。

主人公ジャッキーを演じるパムグリアは40代半ばの設定だが、なかなか魅力的だ。黒人ということもあってか、バックはソウルフルな音楽が中心で、これが実に映画にマッチしている。
70年代前半に「黒いジャガー」とか「スーパーフライ」とかの黒人映画があったがそれを彷彿させるような匂いをもタランティーノがもたせる。大好きなクルセーダース「ストリートライフ」が軽快に流れた時は、ランディクロフォードのヴォーカルを聴きながらかなりハイな気分となった。
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