国道52号線沿いの下部あたりから東の方向を見ると、毛無山山塊の手前に格好良く空に突き出す大きな山がある。あの山の名前は何と言うのだろう、登山ルートはあるのだろうか?昭文社の地図には山の名前もルートも書かれていない私にとっては未知の山だった。初めてその山の名を知ったのは3月の嶺朋クラブ(私が所属する山岳会)の例会でのことだった。月例山行で下部温泉から「五老峰」という山に登るという。ひょっとしてあの山か?帰り際に山の場所を聞いてみると、間違いなく下部を通るたびにあこがれとして見上げていたあの山だった。同行させていただくことにした。
当日の朝、増穂町役場に6時に集合する。集まったメンバーは私を含めて5人、上野巌先生、高崎会長、小池さん、秋山さんと会の主力メンバーがずらりと揃う。標高差1400m、しかも明確なルートがないこの山、果たして皆について行くことができるのだろうか?と若干の不安がよぎる。6時50分、下部温泉の駐車場を出発、取り付き口は下部温泉病院の裏側にある森林浴の森という遊歩道で、下部温泉病院の前を横切って道に入る。かつて遊歩道として整備したらしく、トイレやベンチも備え付けられているが、現在は歩く人も無いらしくすっかり荒れ果てている。この道は山腹を巻くように取り付けられており、目指す五老峰は道の途中から尾根に取り付き、尾根をはずさないようにひたすら上を目指して登る。
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登山口の森林浴の森。向こうに見えるのはトイレだが、荒れている。
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可愛らしいアブラチャンの花。下に見える建物は下部温泉病院。
登り始めはスギやヒノキの植林の中を歩く。ところどころに林業作業用の目印と思われるテープがあちらこちらにつけられている。1時間ほど歩いた標高500mあたりのところでやや平坦になり、左手に伐採地がある。ヒノキが植林されているがまだ若木で背丈までもなく、ここから八ヶ岳方面が見えるらしいのだが、この日は雲が湧き、見ることができなかった。
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下部のスギ・ヒノキ林を登る。あちらこちらにテープがついている。
急斜面となり、道なき道をさらに1時間ほど登った標高約900mあたりの所に、モミの巨木が2~3本立ち並び、大きな岩がごろごろとしたやや歩きにくいところがある。さらに急斜面を進むと美しいヒメシャラの木が何本も立ち並ぶ広葉樹林の林を通過する。そしてやや平坦な登りとなり、その先にはこのルートのハイライト、大石を敷き詰めた城壁を思わせるような大岩が目の前に立ちはだかる。時間は10時15分、標高は約1150m、休憩するには良い場所だ。
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モミの大木。このあたりは大岩がゴロゴロしていて歩きにくい。
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美しいヒメシャラの木が立ち並ぶ広葉樹林の林。
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城壁のような大きな岩壁が立ちはだかる。
この大岩を右に巻いて進むと、補助ロープが張られた急斜面を通過する。こんなルートのはっきりしない山でも管理してくれている人がいるのかと思うと感心させられる。ここを登り切って再び尾根に取り付くと、一旦傾斜が緩くなり、やや痩せた尾根を通過する。再び急傾斜となって30分ほど登ると、右側から来る尾根と合流する。標高約1550m地点の下山で使う予定の尾根だ。テープが一応はつけられてはいるが、わかりにくいので登りの時に確認しておいたほうが良い。コースを左向きに変え、20分ほど登ると大きな枯れ木が立つ岩に辿り着く。ここは展望台になっていて、岩の上から振り返ると笊ヶ岳、荒川三山から北岳まで、南アルプスの山々がずらりと並んで見える。その先にも展望台がありそこからは南部方面の眺望が開けている。ここから10分もかからずに三角点のある五老峰山頂に到着する。山頂には「五老峰、1618.5m」と書かれた古い看板が立てられている。林の中にある山頂は残念ながら眺望は得られない。時間は11時40分、順調に4時間40分で到着できた。(約300m/1時間のペース。)
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大岩を覗き込む小池さん。直登はちょっと危なそうだ。
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大岩を右に巻いてトラロープに沿って急斜面を登る。
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この岩を登ると三角点のある山頂は間近。
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五老峰山頂で記念撮影。林の中で展望は無い。
山頂のすぐ下の平らな場所で昼食をとり大休憩する。秋山さんが持ってきてくれたビールと天婦羅が実においしかった。1時間ほど休み、展望岩のところで記念撮影して下山開始。急斜面をスリップしないように気をつけて下りる。尾根の分岐点をそのまま真直ぐに進み、湯の奥集落方向に進路をとるが、そのまま真直ぐ行くと別の尾根に迷い込んでしまうらしく、進路はやや左寄りにとる。30分ほど下ったところ(標高約1300m地点)で緩いコルに着き、小コブをひとつ越える。さらにもうひとつコブがあり、そこには大きなツガの木が立ち、赤いペンキサインが塗られている。ここが下山時の重要ポイント、先行した3人はそのまま真直ぐに進んでしまったのだが、最後尾の高崎さんがここから90度近く左に折れてテープがつけられているのを発見した。先行3人を呼び戻し、ここでルートを確認する。小池さんが以前登った時に途中のコルで曲がったのを記憶しており、ここは左に曲がって尾根を下りると、10分ほどで保存状態良好な炭焼き釜のある場所に出る。釜の中を見ると、3~4人は寝れそうなくらいのしっかりとしたスペースが開いていた。
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1300m地点、下山時のポイントとなる場所。右の大きなツガの木に円いペンキサインあり、ここでほぼ直角に左方向に下りる。
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分岐から10分ほど下るときわめて保存状態の良い炭焼き釜がある。
さらに急斜面を下ってゆくとやがてスギ・ヒノキの植林帯に入る。足元に切り倒された木がゴロゴロと転がっており、なんとなく道があるような無いような斜面だが、標高900mあたりの場所から道は明瞭になってくる。途中には壊れた炭焼き釜の跡があり、そのあたりはもうしっかりとした山道になっている。歩く人は少ないらしく、足元には落ち葉がたくさん積もっていた。明瞭な道を40分ほど下ると、入り口に願掛け地蔵の立つ湯の奥林道に到着した。時間は午後14時55分だった。(下りは約550m/1時間のペース。)
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下山道下部の良い道。標高900mあたりからこういう道になる。
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湯の奥集落にある国指定重要文化財、門西家の建物。
直下に湯の奥集落があり、ここには国の重要文化財に指定されている門西家の藁葺屋根の建物がある。集落で1人の老人と出会い、今回私たちが登った山を「ごろぼう」と愛着をこめて呼んでいた。湯の奥林道を道端のふきのとうを摘みながら楽しんで歩き、午後4時半、下部温泉の駐車場に到着した。大変な山だったが、山歩きの楽しさを存分に味わえる、実にすばらしい山だった。ここのところ月や星、太陽と富士山を中心に、写真のことばかり考えて登っていたが、登山の楽しさを改めて実感させてくれるすばらしい山行だった。嶺朋クラブの方々に感謝したい。
参考タイム
下部温泉6:50-モミの大木(標高900m)9:15-城壁のような大岩(標高1150m)-10:15-尾根分岐 (標高1550m) 11:15-五老峰山頂 (標高1618.5m) 11:45-(休憩1時間)-五老峰12:50-尾根分岐12:58-下山尾根分岐点(ツガの木地点、標高1300m) 13:25-炭焼き釜13:35-明瞭な道(標高900m)14:15-湯之奥林道14:55-湯之奥集落15:15出発-下部温泉16:30
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五老峰ルート地図(カシミール3Dから作成)
当日の朝、増穂町役場に6時に集合する。集まったメンバーは私を含めて5人、上野巌先生、高崎会長、小池さん、秋山さんと会の主力メンバーがずらりと揃う。標高差1400m、しかも明確なルートがないこの山、果たして皆について行くことができるのだろうか?と若干の不安がよぎる。6時50分、下部温泉の駐車場を出発、取り付き口は下部温泉病院の裏側にある森林浴の森という遊歩道で、下部温泉病院の前を横切って道に入る。かつて遊歩道として整備したらしく、トイレやベンチも備え付けられているが、現在は歩く人も無いらしくすっかり荒れ果てている。この道は山腹を巻くように取り付けられており、目指す五老峰は道の途中から尾根に取り付き、尾根をはずさないようにひたすら上を目指して登る。
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登山口の森林浴の森。向こうに見えるのはトイレだが、荒れている。
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可愛らしいアブラチャンの花。下に見える建物は下部温泉病院。
登り始めはスギやヒノキの植林の中を歩く。ところどころに林業作業用の目印と思われるテープがあちらこちらにつけられている。1時間ほど歩いた標高500mあたりのところでやや平坦になり、左手に伐採地がある。ヒノキが植林されているがまだ若木で背丈までもなく、ここから八ヶ岳方面が見えるらしいのだが、この日は雲が湧き、見ることができなかった。
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下部のスギ・ヒノキ林を登る。あちらこちらにテープがついている。
急斜面となり、道なき道をさらに1時間ほど登った標高約900mあたりの所に、モミの巨木が2~3本立ち並び、大きな岩がごろごろとしたやや歩きにくいところがある。さらに急斜面を進むと美しいヒメシャラの木が何本も立ち並ぶ広葉樹林の林を通過する。そしてやや平坦な登りとなり、その先にはこのルートのハイライト、大石を敷き詰めた城壁を思わせるような大岩が目の前に立ちはだかる。時間は10時15分、標高は約1150m、休憩するには良い場所だ。
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モミの大木。このあたりは大岩がゴロゴロしていて歩きにくい。
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美しいヒメシャラの木が立ち並ぶ広葉樹林の林。
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城壁のような大きな岩壁が立ちはだかる。
この大岩を右に巻いて進むと、補助ロープが張られた急斜面を通過する。こんなルートのはっきりしない山でも管理してくれている人がいるのかと思うと感心させられる。ここを登り切って再び尾根に取り付くと、一旦傾斜が緩くなり、やや痩せた尾根を通過する。再び急傾斜となって30分ほど登ると、右側から来る尾根と合流する。標高約1550m地点の下山で使う予定の尾根だ。テープが一応はつけられてはいるが、わかりにくいので登りの時に確認しておいたほうが良い。コースを左向きに変え、20分ほど登ると大きな枯れ木が立つ岩に辿り着く。ここは展望台になっていて、岩の上から振り返ると笊ヶ岳、荒川三山から北岳まで、南アルプスの山々がずらりと並んで見える。その先にも展望台がありそこからは南部方面の眺望が開けている。ここから10分もかからずに三角点のある五老峰山頂に到着する。山頂には「五老峰、1618.5m」と書かれた古い看板が立てられている。林の中にある山頂は残念ながら眺望は得られない。時間は11時40分、順調に4時間40分で到着できた。(約300m/1時間のペース。)
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大岩を覗き込む小池さん。直登はちょっと危なそうだ。
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大岩を右に巻いてトラロープに沿って急斜面を登る。
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この岩を登ると三角点のある山頂は間近。
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五老峰山頂で記念撮影。林の中で展望は無い。
山頂のすぐ下の平らな場所で昼食をとり大休憩する。秋山さんが持ってきてくれたビールと天婦羅が実においしかった。1時間ほど休み、展望岩のところで記念撮影して下山開始。急斜面をスリップしないように気をつけて下りる。尾根の分岐点をそのまま真直ぐに進み、湯の奥集落方向に進路をとるが、そのまま真直ぐ行くと別の尾根に迷い込んでしまうらしく、進路はやや左寄りにとる。30分ほど下ったところ(標高約1300m地点)で緩いコルに着き、小コブをひとつ越える。さらにもうひとつコブがあり、そこには大きなツガの木が立ち、赤いペンキサインが塗られている。ここが下山時の重要ポイント、先行した3人はそのまま真直ぐに進んでしまったのだが、最後尾の高崎さんがここから90度近く左に折れてテープがつけられているのを発見した。先行3人を呼び戻し、ここでルートを確認する。小池さんが以前登った時に途中のコルで曲がったのを記憶しており、ここは左に曲がって尾根を下りると、10分ほどで保存状態良好な炭焼き釜のある場所に出る。釜の中を見ると、3~4人は寝れそうなくらいのしっかりとしたスペースが開いていた。
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1300m地点、下山時のポイントとなる場所。右の大きなツガの木に円いペンキサインあり、ここでほぼ直角に左方向に下りる。
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分岐から10分ほど下るときわめて保存状態の良い炭焼き釜がある。
さらに急斜面を下ってゆくとやがてスギ・ヒノキの植林帯に入る。足元に切り倒された木がゴロゴロと転がっており、なんとなく道があるような無いような斜面だが、標高900mあたりの場所から道は明瞭になってくる。途中には壊れた炭焼き釜の跡があり、そのあたりはもうしっかりとした山道になっている。歩く人は少ないらしく、足元には落ち葉がたくさん積もっていた。明瞭な道を40分ほど下ると、入り口に願掛け地蔵の立つ湯の奥林道に到着した。時間は午後14時55分だった。(下りは約550m/1時間のペース。)
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下山道下部の良い道。標高900mあたりからこういう道になる。
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湯の奥集落にある国指定重要文化財、門西家の建物。
直下に湯の奥集落があり、ここには国の重要文化財に指定されている門西家の藁葺屋根の建物がある。集落で1人の老人と出会い、今回私たちが登った山を「ごろぼう」と愛着をこめて呼んでいた。湯の奥林道を道端のふきのとうを摘みながら楽しんで歩き、午後4時半、下部温泉の駐車場に到着した。大変な山だったが、山歩きの楽しさを存分に味わえる、実にすばらしい山だった。ここのところ月や星、太陽と富士山を中心に、写真のことばかり考えて登っていたが、登山の楽しさを改めて実感させてくれるすばらしい山行だった。嶺朋クラブの方々に感謝したい。
参考タイム
下部温泉6:50-モミの大木(標高900m)9:15-城壁のような大岩(標高1150m)-10:15-尾根分岐 (標高1550m) 11:15-五老峰山頂 (標高1618.5m) 11:45-(休憩1時間)-五老峰12:50-尾根分岐12:58-下山尾根分岐点(ツガの木地点、標高1300m) 13:25-炭焼き釜13:35-明瞭な道(標高900m)14:15-湯之奥林道14:55-湯之奥集落15:15出発-下部温泉16:30
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五老峰ルート地図(カシミール3Dから作成)
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