一昨日の夜に剣岳に測量のために登った人に関する映画をテレビで見ました。翌日、新田次郎の原作を手にとって見ました。原作の緻密で圧倒的な文章に目を見張りました。テレビばかり見て本を読まなくなった自分の怠惰に気がつき、今日は大型書店へ行っていろいろな本を眺めて、考えてきました。そして1冊買って来ました。
ジャレド・ダイアモンド著、倉骨 彰 訳の「銃・病原菌・鉄」の上巻(1980円)です。読み出したら引き込まれました。まだ一部しか読んでいませんが、この本はブログで広くご紹介すべき本と思いました。比較文化人類学的な視点で、専門の進化生物学や生物地理学という分野から人類の13000年の文化発達を描こうという壮大な本です。
簡単に言えば、「何故、欧米がアフリカやアジアを植民地にし、人類の富の大部分を手に入れることになったのか?」を分かり易く書いた本なのです。その原因を従来のように白人の遺伝子的優秀さに求めず、あくまでも地理と自然環境の相違に求めているのです。
1972年、若い時に研究のために行ったニューギニアで会ったヤリという原住民は、「あなた方白人はニューギニアへいろいろな物を持ち込んだが、我々ニューギニア人が作った物で白人へ与えている物は殆ど無い。これは何故でしょうか?」と問ったのです。
その解答を試みたのがこの本です。どの章も興味津々な内容ですが、以下に第9章、何故シマウマは家畜にならなかったのかーーーのほんの一部をご紹介します。
人類が野生の大型哺乳動物で家畜に出来そうな動物は148種あるそうです。実際家畜にすることが成功したのはこのうちたったの14種だけなのです。このうちの5種、すなはちヒツジ、ヤギ、牛、豚、馬は特に重要です。あとの9種はヒトコブラクダ、フタコブラクダ、ラマおよびアルパカ、ロバ、トナカイ、水牛、ヤク、バリ牛です。
これらの家畜はもともとの野生の状態で6つの性格を持っています。一つでも欠けていれば家畜になりません。この説明が面白いのです。例えばシマウマは気性が荒くて鞍を付けさせません。荷車へ繋げません。無理にすると人に噛みつきます。一旦噛みつくと離さないのです。そういう性格なので家畜に出来なかったのです。現在世界中の動物園ではシマウマに噛みつかれて怪我をする飼育係が非常に多く、猛々しい肉食獣に噛まれる事故は微々たる数になっているそうです。
そしてカバも気性が荒くて家畜になたないとも書いています。
さてこの14種の家畜になった動物は皆がアフリカ北部からヨーロッパやアジアに住んで居たのです。これが南北アメリカをヨーロッパ人が征服した一つの原因になったと即断はしていません。しかしその暗示には意味慎重なものが感じられます。
日本人がアイヌ民族を飲み込み、琉球王朝を合併し、同化した歴史も世界的には似たような現象が幾らでも見られるのです。論理的な善悪は論じていません。民族の優劣も論じていません。ただ地球上で13000年前から人間とその環境に、どのような事が起きたかを客観的に分析し、描いています。久しぶりに高揚する本を見つけましたので、その一端をご紹介いたしました。 (終り)
下にある縞馬の写真はWikipedeaの「シマウマ」の項目から転載させて頂きました。記して謝意を表します。