アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの歴史から社会の裏事情までやたら詳しい人がいます。西洋の事はなんでも知っていると言います。博識ぶりを自慢します。それは良いことで尊敬すべきことです。しかし私は知識よりも大事なことは、人間として正しい考え方を求めつつ生きることの方がもっと大切なことと信じています。
欧米のことには詳しいが、隣国の韓国のことは知らない。それは人間として正しい姿勢でしょうか。そこで韓国のことを少し書くことにしました。
1910年から1945年までの35年間、朝鮮半島全域は日本の領土であったのです。武力による併呑です。この暗い歴史を忘れるためにも日本人は韓国のことを遠ざけて来たようです。しかし近年、映画やテレビ番組やタレントの交流が進み、また多くの観光客がお互いに訪問するようになりました。素晴らしいことですが、日本人は韓国を深く理解していないと思います。いや知らなすぎると私は思っています。それは人間としてどこかおかしい生き方です。
1985年に韓国金属学会の大会へ出席し浦項製鉄所を見学し、その前後に観光旅行もしました。同行してくれたのが製鉄所の技師のHさんです。この写真にある佛国寺をはじめ、慶州周辺の古寺を数ヶ所回りました。小山全体に僧堂が散在し、中心に大きな瓦屋根の本堂が建っています。そのような小山が数峰連なり、慶州の町を取り囲んでいるのです。本堂の瓦屋根の稜線は、中心が少し低くなった曲線を描いていて、なんとも言えない宗教的な雰囲気をかもし出していることに深い感銘を受けました。
しかし、全ての寺の山門の脇に、立派な真鍮製の看板があり、韓国文字でなにやら書いてあります。良く見ると、秀吉という漢字が何回も出ています。同行したH技師へ聞くと、「秀吉の朝鮮成敗の折に、この寺は完全に焼失されたと書いてあるのです」と言う。「でも今日見た全部の寺に看板がありましたよ?」、「そうです。秀吉は朝鮮全土の寺を全て焼いたのです」
そんなことは知らなかった。戦争中に国民学校で秀吉は朝鮮に行ったと習った。加藤清正の虎退治の話が記憶に残っている。全ての寺を焼き尽くしたとは聞いたことが無い。日本人の多くは、韓国で秀吉が、このように書かれているとは知らないと思う。韓国人だけが知っているのです。秀吉軍は朝鮮半島で暴虐をつくし、多くの人々を拉致し、日本へ連れ帰ったのです。その詳細を日本人は調べて知っている方が良いと思います。
@大邱市の天主堂のミサに出る
外国旅行では、お寺へ寄るような気軽さで、教会へも行くことにしていました。その土地の人々のお祈りしている姿を眺めるとなにか安心します。見知らぬ土地を旅する緊張感が消えます。韓国の金属学会の大会のある大邱市でも、中心街にある天主堂のミサに参加しました。韓国語なので何を言っているのか分かりませんが、カトリックのミサは万国共通で同じです。ミサ後、同行したH技師が主任司祭さんへ紹介してくれました。そして韓国の宗教の説明を、少しだけ聞きました。洗礼を受けたキリスト教徒は総人口の30%で、仏教徒が23%、儒教が0.2%と言うのです。聞き違いと思い何度か確かめました。30%のうちプロテスタントが19%でカトリック(天主教)が11%と教えてくれました。忙しそうな主任司祭には長話は失礼と、すぐに別れて帰ってきましたが、帰国後、韓国の宗教別の信者の数を調べなおしました。しかし、上記の数字は正しかったのです。
@韓国のキリスト教信者の数を日本と比較する
日本では洗礼を受けたキリスト教信者は総人口の1%を越えていない。100万人位で、プロテスタント諸派が50万人、カトリックが50万人、そして日本ハリスト正教会が1万人といわれ、特に数十年にわたって増加も減少もしていない。
韓国には、ローマ法王が認めた聖者が104人で日本の聖者は26聖人である。
また韓国人はキリスト教の宣教師が全世界へ10000人以上も派遣されて活躍している。この数は日本より圧倒的に多い。
日本人は韓国を儒教の国や仏教徒の国と信じているが、実はキリスト教が盛んな国なのです。このようなことは韓国の観光情報をインターネットで検索しても出て来ません。また日本の新聞やテレビにも報じられて居ません。しかし韓国人を深く理解するためには重要なことと私は信じています。
ここに書いたことは韓国の現在の文化のほんの一端です。韓国人のタレントの経歴や私生活だけを詳しくしっている日本人が多いようです。少し韓国全体のことも知っていた方が良いと思っています。(終わり)
佛国寺の写真のURL : http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/TE/TE_JA_7_1_1.jsp?cid=281510