○閉鎖的な組織の話
アメリカの東部や中西部の大学の周辺には一戸建ての家を借り切って学生寮にし、それを単なる宿舎以上の種々なクラブ活動の組織にして、学生自身が管理運営している結社的な組織が数多くあります。男子学生のためのフラタニテイと女子学生用のソロリテイと呼ばれる学生組織です。
メンバーは数十人の場合が多く、出身地や専門分野で集まっているわけではありません。キリスト教の宗派や慈善事業の種類、あるいはクラブ活動の目的別で分かれているようです。また家が金持ちの上流階級のみでつくっているものも多くあります。1960年ごろのオハイオは人種差別が強く、このような学生組織で人種差別維持を活動目的にしているものもありました。
フラタニテイやソロリテイの建物はたいてい立派な一戸建てで、その入り口にはアルフアー・シグマ・ムーというようなギリシャ文字で、三文字の看板が出ています。
非常に差別的で閉鎖的な結社の場合が多く、黒人や外国人の近寄りがたい組織でした。このような結社による人脈がアメリカ社会では重要な役割を果たしていると言われることが多いのです。
@アメリカの複雑さと急速な変化を注意深く観察しないと間違ってしまう
進歩的な評論家はよく、アメリカ社会を開放的な自由平等の社会と気楽に書きます。しかし、そんなに単純ではなく、一方では秘密結社も多いのです。こんな暗い一面も有していることを忘れては真の意味での日米友好は出来ません。
閉鎖的な結社も多く存在する社会なのです。しかしそのような結社へは自由意思で参加します。辞める時も自由です。それに加えて宗教関係の団体も多くあります。キリスト教は勿論、仏教関係の組織も多く、ユダヤ教もイスラム教もあるのです。そこには日本人の想像以上の複雑な関係が出来ているのです。
単純にアメリカはプロテスタントの国で、自由で平等という理解では間違ってしまう問題が山積しています。
この複雑な社会を理解する時のもう一つの困難な原因は社会の内部関係がすごい速度で常に変化しているという事実です。よく言えば、「ダイナミックな変化」です。変化の速度がヨーロッパ諸国や日本のように遅くないのです。時々刻々巨大な歯車が回るように変化しています。この変化こそがアメリカの強さばぼです。
女性の国務長官が活躍したり、黒人男性が大統領になることは最近の急な変化です。暗殺されたキング牧師の時代には想像も出来なかった変化ぶりです。
昔、私はオハイオ州に前後4年間住んだことがあります。当時もアメリカ社会の複雑さは理解出来ませんでしたが、現在のアメリカは想像も出来ないくらい変化しているのです。よくアメリカのことを理解しているような評論家がいろいろなことを書いています。私はそれらを読む時には、「嘘ではない!しかしそれはアメリカ社会の断片だ!」と心で叫びながら読むことにしています。
皆様はアメリカ社会のことをどの様に理解していらっしゃるのでしょうか?
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
藤山杜人
写真の説明:左は、オハイオ州立大学内のLord Hall という建物で筆者が1960年から1962年の間に実験装置を作って研究していた建物です。
右は同じくFontana Laboratory という建物で寄付をした当時の学科主任の名前がついています。
アメリカの大学は情報公開が徹底しているのでHome Page 内のキャンパス地図にある建物や風景の写真を自由に転写・使用できるようになっています。
ついでに卒業したり研究生活をしていた日本の大学の建物の写真を探して見たが、公開されて居ません。(終り)