一昨夜はヨットの上でビールを独り飲みながら昼間に一緒にセイリングをしたTSさんの人生を考えていました。
このブログでは信仰篤い神父さん、牧師さん、伝道師さん、そして修道女などの生涯をご紹介して来ました。唖然とするほど立派で素晴らしい人生です。しかし一昨日会った普通のTSさんの人生も素晴らしいと感動しました。自分で料理人ですと言います。洋食の方ですと言います。目下失業中ですとも言います。あせって居ません。ヨットを楽しみながら就職の為の面接に行っているそうです。
若そうにしていますが孫がいるそうです。会社の食堂やレストランで働き子供を育てました。私が料理の腕があると気楽でしょうと言うと途端に真顔になります。気楽なことはありません。限られた材料と予算で美味しいものを作るということは大変な仕事ですと言います。その上仕事がキツクて始発の電車で行って終電で帰ることもしょっちゅうでしたと言います。現在は茨城県の両親の家に住みながら老人の世話をしているそうです。
彼の人生が素晴らしいと気軽に断言する理由があるのです。ヨットに乗って少し荒れる湖を一緒にセイリングすると、その人の性格や本音が見えます。少し身の上話を聞くと人生観が見えて来ます。ヨットの上では「率先実行」が一番重要です。常に風を見て、セイルや舵を調整します。私は悠々と座っていて、つらい仕事は避けています。彼はそのつらい仕事を素早くします。的を外しません。
聞くと渡良瀬湖へ小型ヨットを運んで行って毎週のように楽しんでいます。的を外さない訳です。その小型ヨットをトレーラーに乗せて引くために大型の車を持っています。そしてその車をキャンピングカーに改装しています。話をしていると奥さんの自慢がさりげなく挟まっています。
彼は料理人というキツイ職業を持ちながら家族を愛し、身丈にあった予算で趣味も楽しんでいます。一緒に泊る予定でしたが、強風のお陰で、沖まで快走し、帰港が3時前になりました。何となく家に帰りたそうにしますので一緒の一泊は延期にしました。
彼のキャンピングカーの内部を見せてくれて帰って行きます。出口の南京錠を開け。重い鎖を外し、彼の車を出しました。外に出た彼は車を止めて、また戻って来ます。重い鎖を引っ張って私が南京錠を閉めるのを助けてくれるのです。それで一瞬にして分かりました。彼はどんな職場でも人の嫌がるキツイ仕事を率先して来たのです。弁舌ではありません。周りの人々へ感謝されて来たのです。ああこういう人生もあるのです。そういう人に会ってこちらも何故か幸福感に包まれました。
暗いヨットの上でビールを飲みながら、夜の時間が静かに過ぎて行きます。昼間一緒にセイリングしたTSさんの人生をあれこれ想像しながら。
下に彼のキャンピングカーの写真2枚と、ビールを独り飲んでいる私の目の前の夜景の写真をお送り致します。
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人