生活がやっと少し安定した1973年冬に、甲斐駒の麓に、6畳と4・5畳の山小屋を作った。そこから近い諏訪湖に、子供2人とともに一家でスケートに行く。
妻が昔から持っていた白いフィギアスケート靴をはいていきなり滑り出す。アッという間に、遥か沖に輝く氷板の上に小さく見える。子供2人も妻の指導で間もなく滑れるようになる。
自分は借りたスケートで、よたよた滑る。スケートなんてあまりしたことが無い。仙台市で育ったので、作並スキー場や蔵王スキー場へ良く行った。
決して上手ではないが、蔵王の地蔵岳からドッコ沼まで、何キロも樹氷の間を滑り降りることが出来た。上の写真のような山岳コースである。(上の写真は蔵王スキー場の公式サイトから引用した。)
次の年の冬に白樺湖スキー場へ行った。蔵王に比べるとなだらかな小さなコースである。スケートが上手な妻なら、スキーも自分より上手いと信じきっていた。
そこで一家4人、リフトに乗り、いきなり頂上まで行った。鼻歌まじりに滑り降りて、振り返ると、妻がまだ頂上付近で、転びながら雪まみれになって悪闘苦戦している。子供2人は転びはするが途中まで滑り降りている。
諏訪湖であんなに上手に滑れた妻がしりもちをついている。スキー板が外れる。板だけが滑りおりてしまう。妻は腿まで雪につかりながらそれを拾いに行く。履いてはちょっと滑りすぐ転ぶ。急斜面を真っ直ぐ下ろうとして止まらず、絶叫する。そういえば曲がり方も止まり方も教えていなかった。「こけつまろびつ」ようやく麓まで降りてきた。呆れて見ていた我々は大爆笑。
諏訪湖での笑顔は泣き顔になっている。
スケートが上手なので、スキーも上手と、筆者は信じきっていたのだ。妻はおっちょこちょいなので何も考えず夫婦の義理でリフトに乗ってしまったのだ。妻はスキーの恐ろしさを知らなかった。
よほど怖かったらしく、その後何十年にもなるが喧嘩になると「おもいやりが無い実例」としてこの話を持ち出す。此方の旗色が酷く悪くなり夫婦喧嘩が終了する。つまらない話ですが、育ちも趣味も違う2人が結婚するといろいろ難しい問題が起きます。結婚とは大変なものです。(続く)