おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

「ラストタンゴインパリ」(古きよき映画シリーズその21)

2013-01-29 21:26:45 | 素晴らしき映画
 かなりインパクトのある映画。

《あらすじ》
 ある冬の朝、パリのアパートの空き室を探す若い娘・ジャンヌ(M・シュナイダー)。彼女が下見に行った部屋の中には、中年の男・ポール(M・ブランド)がすでにいた。男は腕をつかみ、暴力的な性行為に及ぶ。ジャンヌにはTVプロデューサーの婚約者がいた。彼は、彼女を主人公にドキュメントタッチの作品を手がけている。
 ジャンヌは再び部屋を訪れると、予期したようにポールがいた。ここにいる間は、ただの男と女同士。名を知らせず、家族や過去を明かすこともないという条件の下で、二人はセックスだけにおぼれていく。

 ポールは下町で簡易ホテルを経営していたが、妻のローザを自殺で失ってしまう。彼にはその理由が分からない。妻には自分よりも愛する男がいたことを知る。
 次第に(時間的経過はさほど長くない設定のようだが)ジャンヌはこうした性行為のみでの逢瀬に耐えられなくなってきた。彼女はトムとの結婚を決意し、トムとこの部屋を訪れるが、新しい二人の生活の場として別のアパートを探すことになる。その帰り道、ポールはジャンヌを待ち伏せていた。ダンスホールに入った二人。社交ダンス・コンテストが開かれ、タンゴの曲が流れている。関係の終わりを告げ、その場から逃げるジャンヌを、ポールは後を追いかけ、彼女の住まいへ押し入る。抱き寄せるポールに、ジャンヌは軍人だった父の遺品のピストルを発射する。ポールはベランダに崩れ折れていく。


 上映当時は大胆な性描写、会話が主に取り上げられて話題になったが、今回、改めて観る。
 妻を自殺によって失った中年の男の悲哀・屈折感(生殖能力を失ってもいる)、自分を心身ともに独り占めにしようとする恋人への不満や葛藤に揺れる若い女性。
 そうした二人が世界から隔絶された一室(生活感の全くない)で、ひたすら性行為に没頭し、お互いの現在、そして過去を一切詮索せず関係していこうとする。しかし、結局は自らのあるがままの現在、捨てきれない過去を引き引きずっていかざるを得ない(互いに知って欲しい、分かって欲しい)、そんな人間的な欲求、存在、そして他者との関わりの苦しみなどを描いている。ラストで、男を射殺した女が「知らない」関係にこだわり自分の行為を納得させようと必死につぶやく場面が印象的。
 「地獄の黙示録」の醜く太った、それでいてかなりの存在感のあったマーロンブランド。「ゴッドファザー」とほぼ同時期の作品。生活に家庭生活に疲れ、それでいてまだまだ行動力を失っていない、中年男の存在感を演じていたことに、さすが! 改めて感動。
 音楽も素晴らしかった。盛り上げ方が最高。

 カメラワークも鏡に姿を映すなど凝っている。また、時々登場する鉄道橋の下など直線的で遠近感のあるタッチの映像がうまく用いられているのが、とても興味深い。

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