1997年5月10日公開。
《スタッフ》
監督:森田芳光
制作総指揮:角川歴彦
脚本:筒井ともみ
音楽:大島ミチル
・・・
《キャスト》
久木祥一郎:役所広司
松原凛子:黒木瞳
衣川和記:寺尾聰
松原晴彦:柴俊夫
久木文枝:星野知子
知佳:木村佳乃
・・・
出版社の敏腕編集者である久木祥一郎(役所広司は、突然、編集の第一線から閑職の調査室配属を命じられた。そんな久木の前に、友人・衣川(寺尾聡)が勤めるカルチャーセンターで書道の講師をしている松原凛子(黒木瞳)という美しい人妻が現れる。彼女は折り目正しく淑やかな女性だが、久木の強引でひたむきな恋の訴えに、やがて彼を受け入れた。そして、週末毎に逢瀬を重ねていくうちに、凛子はいつの間にか性の歓びの底知れない深みに捕われていく。
二人の関係は次第にエスカレートしていき、凛子の養父が死んだ通夜の晩、久木にせがまれた凛子は、夫や母親の眼を逃れて喪服姿のままホテルで密会した。凛子は罪悪感にさいなまれるが、それはかえってふたりの気持ちを燃え上がらせる。
やがて、久木は密かに都内にマンションを借り、凛子との愛の巣を作り上げた。
凛子の夫・晴彦(柴俊夫)は興信所の調査で妻の不貞を知る。晴彦はあえて離婚しないことで凛子を苦しめようとし、一方、久木の妻・文枝(星野知子)は離婚してほしいと要求した。
家庭や社会からの孤立が深まっていく中、二人だけの性と愛の充足は純度を増していく。
そんな折、久木の会社に彼の行状を暴く告発文が送られてきた。久木は、それをきっかけに辞職を決意し、文枝との離婚も承諾する。凛子もまた晴彦や実母との縁を切って、久木のもとに走った。
「至高の愛の瞬間のまま死ねたら」という凛子の願いに共感するようになった久木は、誰にも告げず、二人でこの世を去ろうと決意する。雪深い温泉宿へ向かった久木と凛子は、激しく求め合ったまま、互いに毒の入ったワインを口にした。
後日発見されたふたりの心中死体は、局所が結合したままの愛の絶頂の瞬間の姿であった。
原作の小説「失楽園」は 2014年(平成26年)4月30日に亡くなった渡辺淳一さんの作品。有島武郎と波多野秋子が軽井沢の別荘(浄月荘)で心中した事件を題材にした。
小説やTVドラマが空前の話題作となってヒット。その映画化。「R15指定」。二人の性愛のシーンがかなりの評判に。
が、今まで、この方の作品は、原作を読んだこともTVや映画化されたものも見たことがなかった。今回、遅ればせながら、上映当時大きな話題になった作品を鑑賞。
作家としてかなりの地位を占め、他にも女優などとの艶聞で話題になっていた、くらいの印象。小説やエッセイの「売り」方が実に巧みな作家だなあ、といういささか冷めた感想を持っていたので(同じような意味では村上春樹も嫌いです)。
あまりにも通俗的なストーリーの展開(原作を読んだことのない小生でも先が読める)、伏線も見事に決まる!のには驚きました。今や、そんな印象。
もちろん、もともとの題材が「姦通罪」が存在していた戦前の心中事件を現代に移したわけですから、違和感があるのも当然。ただ、最後のシーンは衝撃的と言えば衝撃的。これがなかったら、「単なる」不倫の果ての「心中」もの。
ただ、有島のときもそうであったように、女性の、心中への積極的な願望、働きかけ。それに応じ共に死出の旅に出る「男」の心。回想的に人生を反芻する雪のシーン、死ぬ二人の上に積もる雪、叙情的ではありました。
きっかけは男の積極的なアプローチから始まった不倫劇が、いつしか攻守、所を変えて女性が積極的に全てをなげうっていく、そこに男の一貫した同意こそあれ、家族や仕事への執着や葛藤などは描かれない。
たしか友人が大切なものとして「家族」「仕事」をあげたときの主人公の表情が印象的ではありました。愛する女のために、どの男もこだわる仕事も家庭も捨てること、人生そのものも未練なく捨ててしまえる。そういう男性像に女性ファンはしびれたのでしょうか?
原作の小説の後半の多くは自殺現場調書の引用で占められている、らしい。それを一気呵成にはしょって映画化・映像化したのは、見事(2時間近くの作品に)です。
自らの性的(情愛的な)願い(理想あるいは現実)を映し出す、それでいて、日本の伝統文学ジャンル「私」小説を乗り越えようとする、エンターテイメント作家の面目躍如たる部分を映像化することで、より確かなものにした感がします。もちろん映像化されることを企図したものであったようですが。
80年の人生を通じて実に、個人的な葛藤をさしおいて、「憎くたらしい」男を演じ続け、たくさんの作品を残した渡辺淳一さんでした。
注:映像はすべて「YouTube」から借用しました。
《スタッフ》
監督:森田芳光
制作総指揮:角川歴彦
脚本:筒井ともみ
音楽:大島ミチル
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《キャスト》
久木祥一郎:役所広司
松原凛子:黒木瞳
衣川和記:寺尾聰
松原晴彦:柴俊夫
久木文枝:星野知子
知佳:木村佳乃
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出版社の敏腕編集者である久木祥一郎(役所広司は、突然、編集の第一線から閑職の調査室配属を命じられた。そんな久木の前に、友人・衣川(寺尾聡)が勤めるカルチャーセンターで書道の講師をしている松原凛子(黒木瞳)という美しい人妻が現れる。彼女は折り目正しく淑やかな女性だが、久木の強引でひたむきな恋の訴えに、やがて彼を受け入れた。そして、週末毎に逢瀬を重ねていくうちに、凛子はいつの間にか性の歓びの底知れない深みに捕われていく。
二人の関係は次第にエスカレートしていき、凛子の養父が死んだ通夜の晩、久木にせがまれた凛子は、夫や母親の眼を逃れて喪服姿のままホテルで密会した。凛子は罪悪感にさいなまれるが、それはかえってふたりの気持ちを燃え上がらせる。
やがて、久木は密かに都内にマンションを借り、凛子との愛の巣を作り上げた。
凛子の夫・晴彦(柴俊夫)は興信所の調査で妻の不貞を知る。晴彦はあえて離婚しないことで凛子を苦しめようとし、一方、久木の妻・文枝(星野知子)は離婚してほしいと要求した。
家庭や社会からの孤立が深まっていく中、二人だけの性と愛の充足は純度を増していく。
そんな折、久木の会社に彼の行状を暴く告発文が送られてきた。久木は、それをきっかけに辞職を決意し、文枝との離婚も承諾する。凛子もまた晴彦や実母との縁を切って、久木のもとに走った。
「至高の愛の瞬間のまま死ねたら」という凛子の願いに共感するようになった久木は、誰にも告げず、二人でこの世を去ろうと決意する。雪深い温泉宿へ向かった久木と凛子は、激しく求め合ったまま、互いに毒の入ったワインを口にした。
後日発見されたふたりの心中死体は、局所が結合したままの愛の絶頂の瞬間の姿であった。
原作の小説「失楽園」は 2014年(平成26年)4月30日に亡くなった渡辺淳一さんの作品。有島武郎と波多野秋子が軽井沢の別荘(浄月荘)で心中した事件を題材にした。
小説やTVドラマが空前の話題作となってヒット。その映画化。「R15指定」。二人の性愛のシーンがかなりの評判に。
が、今まで、この方の作品は、原作を読んだこともTVや映画化されたものも見たことがなかった。今回、遅ればせながら、上映当時大きな話題になった作品を鑑賞。
作家としてかなりの地位を占め、他にも女優などとの艶聞で話題になっていた、くらいの印象。小説やエッセイの「売り」方が実に巧みな作家だなあ、といういささか冷めた感想を持っていたので(同じような意味では村上春樹も嫌いです)。
あまりにも通俗的なストーリーの展開(原作を読んだことのない小生でも先が読める)、伏線も見事に決まる!のには驚きました。今や、そんな印象。
もちろん、もともとの題材が「姦通罪」が存在していた戦前の心中事件を現代に移したわけですから、違和感があるのも当然。ただ、最後のシーンは衝撃的と言えば衝撃的。これがなかったら、「単なる」不倫の果ての「心中」もの。
ただ、有島のときもそうであったように、女性の、心中への積極的な願望、働きかけ。それに応じ共に死出の旅に出る「男」の心。回想的に人生を反芻する雪のシーン、死ぬ二人の上に積もる雪、叙情的ではありました。
きっかけは男の積極的なアプローチから始まった不倫劇が、いつしか攻守、所を変えて女性が積極的に全てをなげうっていく、そこに男の一貫した同意こそあれ、家族や仕事への執着や葛藤などは描かれない。
たしか友人が大切なものとして「家族」「仕事」をあげたときの主人公の表情が印象的ではありました。愛する女のために、どの男もこだわる仕事も家庭も捨てること、人生そのものも未練なく捨ててしまえる。そういう男性像に女性ファンはしびれたのでしょうか?
原作の小説の後半の多くは自殺現場調書の引用で占められている、らしい。それを一気呵成にはしょって映画化・映像化したのは、見事(2時間近くの作品に)です。
自らの性的(情愛的な)願い(理想あるいは現実)を映し出す、それでいて、日本の伝統文学ジャンル「私」小説を乗り越えようとする、エンターテイメント作家の面目躍如たる部分を映像化することで、より確かなものにした感がします。もちろん映像化されることを企図したものであったようですが。
80年の人生を通じて実に、個人的な葛藤をさしおいて、「憎くたらしい」男を演じ続け、たくさんの作品を残した渡辺淳一さんでした。
注:映像はすべて「YouTube」から借用しました。
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