安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

岡田暁生著「モーツァルト」(ちくまプリマー新書)を読みました。

2020-09-25 20:03:05 | クラシック

音楽学者で京都大学人文科学研究所教授の岡田暁生さんの著書が発刊されたので、購入しました。今回はモーツァルトを取り上げていて、興味を惹かれました。

   

表紙。「ちくまプリマー新書」は、2005年に筑摩書房が創刊した新書で、既に300点以上が出されているようです。

   

裏表紙にある本書の紹介

(大まかな目次)

第1章 モーツァルトの比類なさはどこに?
第2章 「天才君」の栄光と悲惨
第3章 「ある」と「なる」――天才の二つのありよう
第4章 失意は天才少年の宿命
第5章 教育パパの呪縛は結婚で絶つ
第6章 「天才」とは何?
第7章 フリーになるということ
第8章 芸術家と実人生
第9章 美の冷酷さについて
第10章 実存の不安と「まあこんなものか・・・・・」の希望
第11章 「ところで」の奇跡
第12章 流麗さについて――モーツァルトの作曲レッスンを受ける
第13章 晴れた日のメランコリー
第14章 モーツァルトは神を信じていたか
第15章 幸福な阿呆に神は宿る

これだけは聴きたいモーツァルトの名演奏
モーツァルト略年表

(感 想)

モーツァルトの生涯と音楽について、新鮮な視点から記述した読み応えのある本です。目次を上に記しましたが、わかりやすさにも配慮されています。各章では、モーツァルトの作品が引用されているので、実際に音楽を聴きながら読むと、理解がより進むと思われました。

第1章では、指揮者の井上道義さんの文章を引用しながら『モーツァルトの音楽という万華鏡の中核にあるものが、井上氏のいう「楽しいのに寂しい、強いのに壊れそう」であることを、私は確信している。』と記し、モーツァルトの音楽は表現に二重性があることを述べています。

第11章では、『ベートーヴェンの音楽は、周到な用意があって劇的な展開がやってくるので理屈で説明がしやすい。それに対して、モーツァルトはその瞬間になって突然何かが閃いたように、「ところで話題を変えましょう」とばかり、いきなり別の楽想が現れる』と概略述べて、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」序曲を例に挙げています。

調性やリズムをいじり、突如として音楽の表情を変え、しかも、音楽に二重の意味を持たせることのできた作曲家は彼しかいないことが、以上のように記されていて、モーツァルトへの興味をかき立てられました。

(著者が推薦する名演奏から)

著者が「これだけは聴きたいモーツァルト名演奏」を挙げていて、とても参考になりました。その中から、今回、発注したものは次のとおりです。手元に届いたものを順次聴いています。

『ポストホルンセレナーデ』ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団
『幻想曲 ニ短調』フリードリッヒ・グルダ(p)。(1995年録画 DVD)
『ピアノ協奏曲第27番』ロベール・カサドゥシュ(p)、ジョージ・セル指揮コロンビア交響楽団
『クラリネット五重奏曲』レオポルド・ウラッハ(cl)、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団

   

クラリネット五重奏曲。レオポルト・ウラッハ(クラリネット)、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団。(CD, 1951年録音)。プリンツ(cl)の演奏のものを持っていたのですが、今回、ウラッハのものを購入。永遠の名盤として、名声の高いアルバムです。