Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

信頼が壊れるとき(2)

2020年12月10日 06時30分53秒 | Weblog
 三島にとって、川端は、自分の文壇デビューをバックアップしてくれた恩人であり、だからこそ結婚式の媒酌人を頼んだりしたのだろう。
 とはいえ、作家・文人として見れば、二人の間に上下関係などあるはずもないので、あくまで対等な友人同士と考えるべきだろう。
 だから、三島としては、川端の恩情は無償のものであり、これに対して報いる義務があるなどとは全く考えていなかった(義務がなくとも自発的に恩返しする)と思われる。
 ところが、川端は、三島に対し、長年の恩情に対する「対価」(ご奉公)として、ノーベル文学賞を自分に譲ることを求めた。
 川端としては、三島が断れないことは分かっていたはずなので、これは、親分から子分に対する命令といってよい。
 しかも、さすがに「これまでの恩情に報いろ」というストレートな表現が出来ないため、川端が「君はまだ若いから、私は年だから」という風に「長幼の序」を持ち出しているところは欺瞞というほかない。
 この瞬間、三島が川端に裏切られたと感じたことは確実である。
 このやり取りを法的な言葉で表現すると、「 échange の強要によってbona fides が破壊された」 とでも言ったところだろうか?
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする