「11月15日(水)、新国立劇場にてオペラ『シモン・ボッカネグラ』初日公演を、天皇陛下が御鑑賞になりました。
『シモン・ボッカネグラ』は実在の初代ジェノヴァ総督シモン・ボッカネグラを題材にしたヴェルディ作曲の傑作オペラです。
当財団の銭谷眞美理事長のお出迎えを受けご到着した天皇陛下は、 大野和士オペラ芸術監督の指揮、ピエール・オーディの演出のもと、世界最高峰の歌手陣が集結した公演を熱心に御鑑賞になり、終演後にはスタッフ・キャストに大きな拍手をお送りになりました。」
『シモン・ボッカネグラ』は実在の初代ジェノヴァ総督シモン・ボッカネグラを題材にしたヴェルディ作曲の傑作オペラです。
当財団の銭谷眞美理事長のお出迎えを受けご到着した天皇陛下は、 大野和士オペラ芸術監督の指揮、ピエール・オーディの演出のもと、世界最高峰の歌手陣が集結した公演を熱心に御鑑賞になり、終演後にはスタッフ・キャストに大きな拍手をお送りになりました。」
このところ、天皇・皇后両陛下と愛子様が歌舞伎、バレエや雅楽の公演を鑑賞される件がニュースになっていた(国立劇場さよなら特別公演(歌舞伎)と熊川哲也さんバレエ(インタビューあり)天皇皇后両陛下と愛子さま秋の芸術鑑賞【皇室ちょっといい話】(121)(2023年11月1日))。
今回は、新国立劇場のオペラ「シモン・ボッカネグラ」の初日公演を、天皇陛下がお一人で鑑賞された。
このオペラの筋書きは結構複雑なので、私見では「予習必須」のカテゴリーに入ると思う。
おそらく、関係者も事前にストーリーを説明しているのではないだろうか?
「予習」が必要なところは、具体的には、① プロローグと第一幕との間に25年の時間の隔たりがある(しかも、そのことは明示されない)、② この間、登場人物の地位が全く変わっており、一部の人物は名前まで変わってしまっている、③ 平民派VS.貴族派、皇帝党VS.教皇党、という、14世紀のジェノヴァの特殊な政治状況が背景にある、などといったところである。
やはり、初めての人は、人物相関図を手もとにおいて(あるいは頭に入れておいて)鑑賞するのがよいだろう。
さて、最も肝心の歌手について言えば、私は最初から安心していた。
というのも、今年5月の「リゴレット」(原作の改良)でタイトル・ロールを演じたロベルト・フロンターリが、今回もタイトル・ロールを演じるからである。
実際、彼を始め、アメーリア役のイリーナ・ルングやガブリエーレ役のルチアーノ・ガンチ(実にいい声で、客席でもその点が話題になっていた)のパフォーマンスが素晴らしい。
この日はアフター・トークがあり、大野和士芸術監督が熱弁を振るっていたが、面白かったのは、このオペラには「出囃子」がないということである。
例えば、「フィガロの結婚」だと、フィガロが登場する際にはフィガロの、ケルビーノが登場する際にはケルビーノの、出囃子とも言うべきメロディーが流れ、それに合わせて歌手が舞台に出て来る。
つまり、舞台の状況を音楽が予告し、説明している。
ところが、「シモン・ボッカネグラ」の場合、出囃子なしでいきなり登場人物のセリフや歌が始まるので、この点に指揮者や演出家はいちばん気を遣うのだそうである。
もちろん、観ている方も、いったい誰が登場しているのかを注意深く目で観察してチェックしなければならないということになる。