「『婦系図』本郷薬師縁日 柳橋柏家 湯島境内」作:泉鏡花
演出:成瀬芳一
演出:成瀬芳一
早瀬主税:片岡仁左衛門
柏家小芳:中村萬壽
掏摸万吉:中村亀鶴
古本屋:片岡松之助
坂田礼之進:田口守
酒井俊蔵:坂東彌十郎
お蔦:坂東玉三郎」
柏家小芳:中村萬壽
掏摸万吉:中村亀鶴
古本屋:片岡松之助
坂田礼之進:田口守
酒井俊蔵:坂東彌十郎
お蔦:坂東玉三郎」
夜の部は”玉三郎二本立て”で、最初の演目は「婦系図」。
だが、何とも恥ずかしいことに、私はチケットを買っておきながら、手帳には翌日のスケジュールとして書き込んでおり、公演当日をスルーしてしまった。
「源氏物語」は何とか後日幕見席で観ることが出来たのだが、「婦系図」はそれも出来ず、結局観ていない。
だが、こういう失敗は、実は歓迎すべきことなのかもしれない。
というのも、観た方の批評を見ると、とても現在の感覚では受け入れがたいストーリーのように思われるからである。
「本郷薬師の縁日。賑わう参道でスリの騒ぎが起こるところに居合わせたドイツ語学者の早瀬主税(ちから)は咄嗟にスリをかばってしまう。その様子を見ていた早瀬の師・酒井俊蔵は早瀬を呼び出し、筋のよくない女と別れるように迫る。
実は幼いころにスリで生計を立てていたところ酒井に救われた過去を持つ早瀬は、元芸者のお蔦と所帯を持っていたが、恩師を捨てることなどできず、泣く泣くお蔦との別れを選ぶのであった。」
「・ハア?????????
・舞姫と同じ匂いを感じる。あれよりはマシだけど。男の勝手な都合で請け出されて(方々に不義理をして戻るつもりも道筋もなく芸者から足を洗っている)、勝手な都合で別れを切り出されて。私ならその場ではっ倒して啖呵切って砂かけて立ち去るね。……いや……、そうね……、こいぬみたいな顔で見られたら黙り込んでしまうかもしれない、仁左衛門さまなら…ぐぬぬ……黙って背を向けるだけにしておきます……
・全体的に場面が夜で客席も舞台も暗いのと、地味~~~~~で暗~~~~~いやりとりがメインなので、ところどころ意識が飛びました。が、後半はむかむかしちゃって全然眠れなかった。腹立つ!」
見ての通り、とても共感出来るようなストーリーではない。
おそらく、私もこの方と同様の感想を抱き、終演後はひたすらムカムカするだけではなかったかと思うのである。
いくら尊敬する恩師:尾崎紅葉の命令だからといって、お蔦と別れるというのは、余りにも主体性がないと思うのである。
いや、その前に、尾崎紅葉の言動は、厚労省が示すパワハラ6類型の一つ:「個の侵害」(私的なことに過度に立ち入ること)にほかならない(厚生労働省が示す“パワハラ類型”の1つ「個の侵害」はなぜ起こる? 原因と解決のポイントを解説)。
なので、これは断固拒否すべきであり、やはりここは、主税(=鏡花)にはお蔦を守り抜いて欲しかった。
それに、私としては、「薄紅梅」の鏡花のイメージを壊されたくない。
というわけで、主体性を欠く主税によりお蔦は自己犠牲を強いられたたことから、「婦系図」のポトラッチ・ポイントは、1.0。